「貨物が主役・旅客は赤字」のアメリカで“とんでもない規模”の鉄道会社が誕生へ! なぜそんなに貨物が儲かる?
アメリカの貨物鉄道最大手が、同業4位の会社を買収すると発表しました。その額は約12.5兆円。旅客鉄道の業績低迷とは対照的に、アメリカではなぜ貨物鉄道がそれほど儲かっているのでしょうか。
貨物が強い「日本と真逆の構造」
貨物鉄道が旅客鉄道に比べて圧倒的に優位な要因としては、線路の大部分を貨物鉄道会社が保有していることがあります。

アムトラックが列車を運行している総延長は計約3万4400km、そのうち自社で線路を保有しているのは首都ワシントンDCと北東部ボストンを結ぶ主要路線「北東回廊」の一部、約1000kmに限られます。残る区間は貨物会社に線路使用料を支払い、使わせてもらっています。
この構図は日本とは正反対です。JR貨物が貨物列車を走らせている区間の大部分は旅客鉄道の所有で、自社で線路を持っている区間はごく一部に限られ、JR旅客6社(JR北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州)および第三セクター鉄道に線路使用料を支払い、貨物列車を運行しています。
アメリカの貨物鉄道会社は線路使用料が重要な売り上げになるのに加え、線路を持っている区間では「露骨に自社の貨物列車を優先的に走らせており、旅客列車は後回しにされている」(アメリカの鉄道会社社員)のも競争力の源泉となっています。
アムトラックは列車の遅延が多いことで知られ「珍しく定刻だと驚いたら、それは前日の同時刻に来るはずの列車だった」という冗談もあります。ただし、遅延の一因になっているのは、貨物列車の通過待ちや、単線区間での行き違いです。
貨物鉄道会社の露骨な自社優遇へのけん制手段として、アムトラックは走らせている貨物鉄道ごとの遅延状況を「A」(大部分の旅客列車が時間通りだった)から「F」(大部分の列車が著しく遅延した)までの段階で格付けする報告書を毎年発表しています。
2024会計年度は貨物列車によるアムトラックの遅れは85万分に達したとして「これは映画『タイタニック』を4594回視聴するのに相当する」と指摘し、UPは「Bマイナス」(Bは一部のルートの旅客列車が遅延)で5位、NSは「Bプラス」で2位でした。「A」を獲得したのは首位となり、カナダとアメリカ、メキシコに路線網を持つ貨物鉄道大手、カナディアン・パシフィック・カンザス・シティ(CPKC)だけでした。
コメント