なぜ醜くした!?「世界一ブサイク」と酷評されたクルマ 実はオーナーたちの評判は悪くなかったワケ
2008年の『デイリー・テレグラフ』紙で、「世界一醜いクルマ」という不名誉な称号を得たのがポンティアック「アズテック」です。ただ、スタイリング以外は使い勝手に優れていたため、ひょっとしたら傑作車に化けた可能性もありました。
デザイン以外は傑作車! ポンティアックの救世主になった可能性も……
それでは「アズテック」が不出来なクルマだったかと言えば、そうではありません。

レジャーでの使い勝手を重視したこのクルマには、広大なラゲッジスペースやフルフラットになるシートに加え、椅子としても使用可能な上下分割式のリアテールゲート、食料品収納庫としても使えるラゲッジのスライド式荷室床、荷室からでも操作可能なオーディオシステム、取り外し可能でクーラーボックスとしても使えるセンターコンソールなど魅力的な装備が備わっていました。
加えて、オプションの「キャンプパッケージ」を選択すれば、テールゲートテントとエアマットレスが付属するなど、便利な機能がふんだんに用意されていたのです。
また、デビュー1年後に追加された「ヴァーサトラック」と呼ばれる4WDシステムは、ビスカスカップリングの代わりに、油圧ジェロータポンプとマルチプレートクラッチパックを採用しており、独立懸架式のリアサスペンションと相まって、クロスオーバーSUVながら本格的なCCV(クロス・カントリー・ヴィークル)にも匹敵する悪路走破性を獲得しています。
だからか、実際に「アズテック」を購入したユーザーの評判は上々で、2001年に独立系消費者調査機関『JDパワー』が行ったアンケート調査によると、SUVのカテゴリーではスタイリングの項目を除き、ほぼ満点に近い評価を得ていました。
こうした結果から考えると、あるいは好評を得たコンセプトカーのままのスタイリングで「アズテック」が販売されていれば、「世界一醜いクルマ」との謗りを受けることもなく、商業的にも成功したのかもしれません。仮にこのクルマが大ヒットしていれば、2010年にブランド廃止となったポンティアックの運命は、まったく別のものになった可能性すらあるのです。
そのように考えると、デザインの失敗で正当な評価を得られぬまま終わった「アズテック」は本当に惜しいクルマであったと、悔やまれてなりません。
Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)
「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に
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