「雪風」映画で艦長ですら一目置く「先任伍長」ってナニ? 「軍隊の鉄の掟」すら凌駕するその存在とは
映画『雪風 YUKIKAZE』では、玉木宏さん演じる先任伍長・早瀬幸平が皆に尊敬される存在として登場します。先任伍長とはそれほど重要な役職なのでしょうか。
工事現場の棟梁や職長に近い存在?
また、艦長や士官が数年で異動するのに対し、先任伍長は長年同じ艦に乗り続けるベテランであるため、艦の癖や設備、若手乗員の性格まで把握しています。艦を円滑に動かすには不可欠な存在であり、艦長でさえ敬意を払うことは珍しくありません。

工事現場にたとえるなら、艦長や士官はゼネコンの現場監督、先任伍長はその下請けである工務店の棟梁や職長にあたると言えるでしょう。
立場的には監督の下ですが、実際の現場を回すには棟梁や職長の存在が欠かせません。豊富な経験と現場の信頼を武器に、監督の相談役にもなり、時には調整役として現場を取りまとめます。
艦内でも同様に、士官たちが「この兵曹に任せておけば大丈夫」と信頼を寄せ、下士官・兵からは「頼もしい上官だが、鬼のように厳しい」と言われる、まさに現場の象徴とも言える存在です。『雪風 YUKIKAZE』で玉木さんが演じる早瀬は、そうした“理想の先任伍長像”を見事に体現しており、ぜひ注目していただきたいポイントのひとつです。
ちなみに、現代の海上自衛隊にもこの伝統は受け継がれており、「先任伍長」という名称は階級ではなく役名として存在しています。護衛艦では、艦長・副長・航海長・砲雷長・機関長などの幹部に加え、艦内の最古参かつ信頼厚いベテラン海曹が「艦先任伍長」として任命されます。
この先任伍長は、場合によっては艦長に意見し、幹部の指示を修正することすらある、現場における特別な立場です。各艦艇に1名必ず配置されており、胸には金色の「先任伍長識別章」を着用しています。役職名としては、まさに旧海軍の伝統を今に受け継ぐ存在といえます。
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
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