わずか3km強に「3者乗り入れ」「東京直通」も!? JR長大幹線の“歴史が濃すぎる”末端区間 終点は「南海のシマ」

JR紀勢本線の和歌山~和歌山市間3.3kmは、かつて東京発の列車が乗り入れた頃もありましたが、現在は区間列車が往復するのみの支線のような扱いになっています。その複雑な歴史を見ていきましょう。

短い区間ながら、座席がほぼ埋まる乗車率

 戦後の1962(昭和37)年には、東京~和歌山市間で夜行急行「大和」が運行を開始します。直通列車といっても王寺~和歌山市間は、寝台車1両が和歌山線経由の普通列車に連結されるという運行形態でした。なお、1両しかない寝台車に車掌室を付けるため、新形式のスハネフ30形が生まれています。

 運転時刻は、東京22時45分発→和歌山市11時30分着、和歌山市20時39分発→東京6時40分着でした。

 しかし、1968(昭和43)年に「大和」は廃止。同年、和歌山駅は紀和駅に、東和歌山駅は和歌山駅にそれぞれ改称されました。

 1985(昭和60)年、南海からの直通急行が廃止され、和歌山~和歌山市間は支線のような位置付けとなり、現在に至ります。2008(平成20)年には、わずか3.3kmの路線ながら高架化が行われています。

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 平日の夕方、和歌山市駅を訪れました。かつては南海と共用駅でしたが、現在はJRと改札口が分けられています。ホームの優雅な屋根が、かつての繁栄を感じさせます。列車は227系1000番台4両編成です。短い区間ですが、車内は座席がほぼ埋まっています。

 和歌山市駅を出発すると南海の線路が並走。かつて直通列車が走っていた痕跡は見当たりません。高架に上がると紀和駅。この初代・和歌山駅は、高架化前まで大きな駅舎がありましたが、現在は1面1線の無人駅です。

 紀和駅を出るとすぐにほかのJR線と合流して、終点の和歌山駅です。和歌山線と同一ホームであり、多くの乗客で賑わっていました。

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Writer:

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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