もう「やられたらやり返す」部隊じゃない――概算要求に見る陸上自衛隊の“変貌”

防衛省が発表した来年度の予算概算要求では、より長射程のミサイル、より遠距離の敵探知能力などに重点が置かれています。ここから、将来の陸上自衛隊の姿が見えてきます。

ヘリを置き換える無人機に「+α」の能力を

 スタンド・オフ防衛能力で整備される、長射程ミサイルや高速で飛翔するミサイルを有効に機能させるためには、攻撃目標を早期かつ正確に探知する能力が必要です。そこで、前に述べた防衛力整備計画では、現在陸上自衛隊が運用しているOH-1観測ヘリコプターとAH-1S対戦車ヘリコプター、AH-64D戦闘ヘリコプターを段階的に全廃して、「多用途無人機」という名称のUAS(無人航空機システム)に置き換える方針を定めていました。

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バイラクタルを製造するバイカル・テクノロジーズを訪問した2023年当時の鈴木量博トルコ大使(左)。バックは無人ステルス戦闘機「バイラクタル・クズルエルマ」(画像:在トルコ日本国大使館)

 陸上自衛隊はこの方針に則り、2023年8月に多用途無人機の調査を行う企業を選定する一般競争入札を行い、トルコのバイカルが開発した「バイラクタルTB2S」と、イスラエルのIAI(Israel Aerospace Industries)が開発した「ヘロンMk II」の調査を行っています。

 この時点での多用途無人機は、敵地上部隊の情報収集と敵の地上部隊への攻撃という、OH-1、AH-1S、AH-64Dが担当している任務を単純に継承すると考えられていました。しかし今回、取得費が計上された「UAV(広域用)」は、おそらく調査が行われた多用途無人機と同一のものと思われますが、“水上艦艇等を遠距離から探知する能力”も求められています。

 複数のメディアは、防衛省・自衛隊がバイラクタルTB2Sを購入することを検討していると報じています。ウクライナが運用しているバイラクタルTB2Sの原型機であるバイラクタルTB2は、ロシア海軍の艦艇に対するミサイルや無人装備での攻撃の際の目標情報収集でも有用性を実証していますので、この点が評価されてバイラクタルTB2Sの導入が有力視されているのではないかと思います。

【ド迫力!】これが陸自の「射程1500キロを目指すミサイル」発射シーンです!(写真)

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