自衛隊が爆買い中「ボーイング製空中給油機」が抱える深刻なトラブル 解決の目途は立っているの?
航空自衛隊が増勢を図っている最中のKC-46A空中給油・輸送機ですが、肝心の空中給油システムに問題があります。最新の映像システムを導入したせいで、うまくドッキングできないのだとか。目途は立っているのでしょうか。
最新の空中給油システムに問題が…
このRVSは、一見すると最先端技術の結晶に見えます。24インチの高解像度3Dディスプレイが並び、複数のカメラから送られる立体映像を通して、操作者はあたかも目視しているかのように受油機へブームを接近させることができる、はずでした。

ところが、実際にはシステムの精度や表示の遅延、光条件による映像の乱れなどが重なり、受油機との接触が不安定となる事例が相次ぎます。中には受油機の外板にブームが擦れ、損傷を与える事故まで発生したほどです。給油そのものが航空作戦の生命線である以上、この欠陥は技術的瑕疵を超え、戦略的リスクもはらむほどになっています。
アメリカ空軍は問題の重大性を認識し、ボーイングとともに改修作業を続けています。現在配備されているKC-46には「RVS 1.5」と呼ばれる応急対策版のシステムが搭載され、ソフトウェアの調整によって映像処理を改善したとされます。
しかし、これは根本的な解決策ではなく、あくまで「当面の妥協」的な水準にすぎません。抜本的な改良が施されるのは、2026~2027年から導入予定の「RVS 2.0」であり、完全な安定運用にはまだ時間を要するようです。つまり、アメリカ空軍も航空自衛隊も、当面のあいだは潜在的なリスクを抱えたまま、この新世代の空中給油機を飛ばし続けなければならないという厳しい現実に直面しているのです。
空中給油機は戦闘の主役ではないものの、その存在なくして近代空軍は「戦える軍隊」として成立し得ません。KC-46の不具合は、まさにこの「影の主役」の重要性を逆説的に示していると言えるでしょう。アメリカと日本の空を支えるべき新世代の翼に、今なお暗雲が垂れ込めていることは、決して看過できない事実です。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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