「『1面1線』でいいよね?」→超絶ボトルネックに! “見込み違い”がアダになったタイの“御堂筋線みたいな駅”とは
鉄道などのインフラは、出来たあとの改良が難しい場合があります。当初の“見込み違い”が、のちに大きなボトルネックとなり、解消の計画も揺れている現場が存在します。
鉄道建設当時の“見込み違い”が尾を引く
鉄道路線を新設するとき、事前の予測が100%当たるとは限りません。その予測は利用客の数だけではなく、設備や運用も含まれ、こうした予想が外れると、ときには駅や設備の改良工事など、解決のために長い時間と多額の費用が発生するケースもあります。

たとえば東京メトロ有楽町線の小竹向原駅は開業当初、地下鉄有楽町線、西武有楽町線が発着する駅で、2面4線でスムーズに運用されていました。しかし地下鉄副都心線の開業後、乗り入れる運行系統の複雑化によりダイヤ乱れが頻発したことから、地下へ新たに連絡線を設けるという大規模な工事が行われています。
こうした“見込み違い”は海外でも発生。改善が容易ではなく、ボトルネックが解消されないケースがあります。その一例が、タイの首都、バンコクの高架鉄道「BTSシーロム線」のチャオプラヤー川左岸にある「サパーンタークシン駅」です。
「1面1線」でいいよね、取り壊すし…
同駅は、バンコク新市街と旧市街を結ぶ幹線道路「サトーン通り」がチャオプラヤー川を渡るタークシン橋の東側、高架道路の上下線に挟まれたスペースに建設されました。スペースの関係から、シーロム線で唯一の「1面1線」構造となっており、ここだけ単線になるため輸送上のボトルネックとなっています。
線路の両側を道路に挟まれる構造は、日本でいうと大阪メトロ御堂筋線の高架区間(中津以北)のようでもあります。ここにはスペースからして「2面2線」のプラットフォームを設置することはもともと困難でしたが、シーロム線開業当初は同駅が終着駅で、チャオプラヤー川右岸に延伸したあとは取り壊すことを想定した「仮設駅」の扱いでした。当時は、すべての列車がここで折り返し運転していたことから、「1面1線」の構造でも問題はなかったのです。
しかし、サパーンタークシン駅を降りたところのチャオプラヤー川左岸には「サトーン船着き場」があり、BTS開業前からチャオプラヤー川を利用した水上交通とバンコク新市街に向かうバスやソンテウ(トラックを改造した乗り合いバス)など地上交通との重要な交通結節点でした。
そしてBTS開業後は同駅から発着する列車が「渋滞なしにバンコク市街各地にアクセスできる」というメリットにより、あらたな地上交通の主役に躍り出ます。通勤客を中心に利用は予想を上回り、当初の「将来的な取り壊し」は撤回されることになったのです。
「御堂筋線みたい」という表現は、御堂筋線が単線のところがあるような印象を受ける。