自衛隊が「防弾ランドクルーザー」採用するの!? じつは世界中で実績多数! ただ課題も山積み
陸上自衛隊が多数使用する軽装甲機動車の後継に、市販4駆の防弾改造車が採用される可能性が高いとNHKが報じました。候補はトヨタ「ランドクルーザー」といすゞ「D-MAX」とのことですが、課題は山積のようです。
世界に普及する防弾仕様の日本車
ただ、装甲車に改造するといっても、「鉄板を貼れば済む」という単純なものではありません。重量バランスや足回りの補強、防御力と悪路走破性、車内の快適性など様々な面でバランスをとった設計にするなど、高度で専門的な知識と技術が不可欠です。

フランスのセンティゴン社は、軍・警察向けに幅広く防弾車両を提供する老舗メーカーですが、自社製品の防弾性能の確認と技術開発のために、実銃を使った弾道試験を毎年1000回以上も行っているそうです。
同社が製造した防弾仕様のランドクルーザーは、フランス国家憲兵隊の特殊部隊GIGNでも用いられており、外観は通常車両と同じながら、内装には防弾モジュールを装備しています。こうした改造により、重量は約5tと通常のランドクルーザーの倍に達し、これに伴いブレーキやサスペンション、ホイールは強化されています。
とはいえ、フレームとエンジンは無改造のまま、すなわち標準仕様で対応可能という点が、ランドクルーザーの高い基本性能を裏づけているといえるでしょう。ただ、防護性能は7.62mmライフル弾レベルが限界で、これ以上の防弾能力や、IEDを含む爆発物への抗堪性を求めるならば、装甲モジュールの追加が必要とされています。
これについてセンティゴン社の社員も、「防弾モジュールの追加によって防御力を高めることはできますが、それによって車体重量が増え機動性は低下します。その場合は、防弾車ではなく装甲車や戦車を使う方が確実です」と説明しており、民間車両の防弾化はバランスの難しさがあるといえるでしょう。
防衛省や外務省はこれまでも、在外公館向けの公用車や海外派遣任務での足車などで民間車両ベースの防弾車を少数導入した例があります。しかし、部隊の装備品(制度装備)としての大々的な採用は今回が初めてとなります。
また、「ハウケイ」「イーグルIV」がともに不採用となった背景にはコスト問題があったといいますが、今回の民生車両改造にも予算という制約が存在するのは間違いありません。民間車ベースとはいっても高い性能を求めれば金額は跳ね上がるため、試験と選定には軍用車以上に困難が伴う可能性もあります。
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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