「こ、この手で“列車”を運転している…」この高揚感! 日本一寒い町にある「日本最長の保存鉄道」を体験
北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線の廃線跡を活用した「りくべつ鉄道」では、全国から運転体験を希望する人々が訪れ、リピーターも定着しています。
線路も車両も「残していく」
りくべつ鉄道は年に5回ほど運転士OBがハンドルを握る「乗車体験構外特別運行」が実施され、旧陸別駅から旧分線駅までの往復乗車ができます。

ただし、道路と交差する踏切は銀河線廃止時に鉄道優先から道路優先となり、所轄警察署へ道路占有許可証を提出して、保安要員を配置して対応しています。分線コースでも駅構内から運転し旧踏切前で一旦下車して、反対側に待機する車両へ乗り換える一手間があるのですが、旧踏切を勝手に走らせることができないため、こうした方法を採用しています。
車両は製造から37年が経過し、「気動車が壊れたら保存鉄道の運営もどうなるのか」と、陸別町商工会でも意見が交わされましたが、町長自らがりくべつ鉄道は残していきたいとの考えを示しました。
車両はアナログ感満載の気動車であり、地域の自動車整備工場等で日々のメンテナンスが可能です。パーツ類に関していえば、例えばヘッドライトが切れた際、既存のものが在庫切れの場合はLED化をすることとなります。代替品で対応できるところは実施し、銀河線で走っていた状態を維持し、激変させずに残していくことを目標にしています。車両はラッピングすることもありますが、基本的には銀河線の塗色のまま残していく方針です。
また、車両の大規模修繕工事は町の予算でまかない、一千万円単位で掛かる修繕工事を実施してく予定です。保有数は6両ですが、さすがに一度では予算が限られます。日々運営するためには、最低3両の大規模修繕が必要とのことです。
陸別町はかつて酪農と林業が盛んでした。今では全国で一番寒い町を売りにして、真冬に「しばれフェスティバル」が開催され、地元の誘致によってラリー選手権も開催。さらに低緯度オーロラが観測できるため、町営の天文台もあります。そこに保存鉄道りくべつ鉄道が加わって全国からファンが集まり、陸別町の一つの顔となっています。
全国からリピーターも増えており、りくべつ鉄道はこれからも町の顔として活躍していくことでしょう。
Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。日本写真家協会(JPS)正会員、日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員。
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