「飛行機乗る人よりカネ使う人優遇」に怒りの声も 新千歳空港の駐車料金“最大5倍”の衝撃 一体なぜ?
北海道の新千歳空港が2025年10月10日、駐車料金を大幅に値上げしました。SNSでは怒りの声も上がっていますが、その背景には空港が抱える事情と、今後の展望がありました。
「飛行機に乗る人」より「乗らない人」が大事?
ただここで考えなければならないのは、「稼げる空港が求められている」という背景です。

空港の収入の基本は着陸料を柱とする航空系事業ですが、日本の多くの空港は航空系事業の収入だけでは黒字を維持することができない状態でした。しかし、海外の空港も含めた空港間の競争が激化するなか、安易な着陸料の値上げは困難です。そのため、空港の施設をきちんとアップデートし、使いやすく安全な空港であり続けるためには、着陸料以外の非航空系事業の収入の確保が不可欠なのです。
たとえば「関西国際空港」は、コンセッション方式で民間に運営権を売却し、商業施設の充実などに努めた結果、2016年3月期には「成田国際空港」を上回る営業収益を上げるまでとなりました。
実は新千歳空港も北海道の他空港も含め、2020年に運営を民間に委託しており、「稼げる空港」への転身を図っています。今回の「施設利用者への優遇」は、「駐車場混雑の緩和」と「空港施設の売上げ増」というふたつの目標を両立させる上で、不可避とも言えるでしょう。
「羽田の値上げ」と似ているようで異なるポイント
今回の新千歳空港の駐車料金改定は、この夏から秋にかけての「羽田空港」の駐車料金大幅値上げとも重なる部分があります。
ただ新千歳空港が羽田空港と異なるのは、単に値上げだけの発表となった羽田空港に対し、年内に1000台規模の臨時無料駐車場の開設、続いて最大3000台規模の「新立体駐車場(D駐車場)」の整備を表明していることです。
D駐車場がどういった料金体系になるのかはまだ不明ですが、その予定地はターミナルの北約1kmのところで、現状のC駐車場同様にシャトルバスでの移動になるはずです。
D駐車場が開業し、駐車場全体の混雑が緩和されることになれば、「駐車料金は高額ながら、ターミナルに近いA・B駐車場」「ターミナルからは遠いが駐車料金が低廉なC・D駐車場」という住み分けも可能になるかもしれません。
新千歳空港には駐車料金の再改定も含め、「空港における非航空系事業の収入の確保」と「飛行機の利用者にとっての少ない負担」の実現を期待したいと思います。
Writer: 植村祐介(ライター&プランナー)
1966年、福岡県生まれ。自動車専門誌編集部勤務を経て独立。クルマ、PC、マリン&ウインタースポーツ、国内外の旅行など多彩な趣味を通し積み重ねた経験と人脈、知的探究心がセールスポイント。カーライフ系、ニュース&エンタメ系、インタビュー記事執筆のほか、主にIT&通信分野でのB2Bウェブサイトの企画立案、制作、原稿執筆なども手がける。
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