ガンダム世界の「地球連邦軍」なぜ一年戦争後“超絶ザコ化”したのか? 現実にもあてはまる「仕方ない」状況とは?

ファーストガンダムでは圧倒的な軍事力を示した地球連邦軍、ただのその後のシリーズでは弱体化が目立ちます。なぜなのでしょうか。

インフラ復興や過度な鎮圧行為が仇に?

 これは、「この時期の地球連邦軍が明らかに予算不足」であることも原因でしょう。一年戦争からの復興には巨額の予算が必要です。宇宙世紀0087年の『機動戦士Zガンダム』の世界では、一年戦争で壊滅したスペースコロニー群、いわゆる「サイド」が概ね復興しています。

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軍事力弱体化によりテロリストと嫌悪する相手と交渉を行う高官(イラストレーター:ハムシマ)

 壊滅したコロニーの再建造にかかるコスト増を補うため、おそらく毒ガスや艦砲射撃で被害を受けた損傷コロニーを修理することで予算を低減したのでしょうが、それでも空気の浄化や再充填、インフラの修理が必要なため、財政負担は非常に大きいはずです。

 なお、『機動戦士ガンダムZZ』のネオ・ジオン軍によるコロニー落としや、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の5thルナ落下に対して、地球連邦軍は限定的な兵力しか出していません。

 予算不足もあるにせよ、『Z』で各サイドが再建されていることを考えると「一年戦争終了時に地球に居住していた人口」が強制的に再建されたコロニーに移されたはずです。地球連邦政府は、ジオンが「特権階級の利益のために宇宙移民を止めた」と批判したことに対し、「宇宙移民を進めればジオン残党の大義名分はなくなる」と考えて、地球の人口をさらに宇宙に移したということです。

 しかし、その間にも『機動戦士ガンダム0083』のコロニー落としで地球はさらなる被害を受けています。スペースコロニーは宇宙空間に浮かぶ、巨大で密閉された生存空間である構造上、数十万人単位の隔離に適していますから、政府は反対する地球からの強制移民者をまとめて監視し、テロ対策を行ったと思われます。

 宇宙世紀0085年にはティターンズがサイド1の30バンチコロニーに毒ガスを注入し、1500万人を虐殺。さらに0087年にも同様の作戦を実施しています。つまり、反連邦運動の「テロリスト予備軍」と見なされていたのでしょう。

 こうした虐殺行為による反連邦運動の高まりにより、地球連邦はさらに衰退。そして一部の地球連邦軍は反乱軍「エゥーゴ」となったため、仮想敵も「戦略機動性の高い少数精鋭」となり、ますます「個別のモビルスーツの性能」と「機動力の高い新型艦艇」が重視されたのだと考えられます。

 それが「新型艦艇の小規模艦隊に精鋭モビルスーツばかり載せ、機種更新が異常に速い」という宇宙世紀の構造が実現した理由ではないでしょうか。数が少ないからこそ、モビルスーツの性能で劣ることは全面的な戦線崩壊を招くのです。ドズル中将の有名なセリフとは逆に、「戦いは質」が宇宙世紀の実像だったのかもしれません。

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Writer:

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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