「日本海までモノレールを延ばす!」結果は“わずか8年で休止” そこまで大風呂敷を広げたワケとは? 幻の姫路モノレール

兵庫県姫路市で8年間だけ運行されたモノレールが、来年で60周年を迎えます。その背景には、日本海まで延伸する壮大な「幻の構想」がありました。

「世界唯一」の車両へ自由に入れる!

 ロッキード式モノレールの日本での採用例は他に、小田急電鉄が1966年に川崎市で開業した小田原線向ケ丘遊園駅と遊園地「向ケ丘遊園」(2002年閉鎖)の正門をつなぐ路線がありました。2000年2月に休止し、01年2月に廃止されました。

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姫路モノレール手柄山駅の発車時刻表(大塚圭一郎撮影)

 向ヶ丘遊園の車両はすでに存在せず、ロッキード式モノレールの車両で現存するのは、手柄山に展示された姫路モノレールの両運転台車両200系2両が世界唯一です。

 うち1両は、手柄山交流ステーションの開館中ならば車内へ自由に入れます。天井には円形の扇風機が連なり、赤いモケットが覆った転換クロスシートが並んでおり、昭和時代にタイムスリップしたような気分になります。

 筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は兵庫県立ものづくり大学校(姫路市)の元校長で史跡探訪家の緒方孝昭さんに案内いただいて訪れました。

 緒方さんは座席に腰掛けると「いやあ、懐かしいなあ」とつぶやき、「59年前の小学校1年生の時、姫路大博覧会見学に合わせて開業間近の姫路モノレールに乗ったのが楽しい思い出です」と振り返りました。幼少期の緒方さんは「姫路モノレールのスマートなかっこよさに技術の未来を感じていました」と言います。

「営業時間が短い!」そのワケは

 モノレール展示室には、運行中の手柄山駅の発車時刻表が掲げられています。驚かされるのは、当時で約38万人(2025年10月1日現在では51万6529人)の人口を抱えていた姫路市の公共交通機関とは思えないような営業時間の短さです。

 平日と土曜日は1時間当たり3本出発し、4月1日―9月末が9時台から17時台、10月1日―翌年3月末に至っては9時台から16時台にとどまります。手柄山を訪れる行楽客が増える3月―11月の日曜・祝日には1時間当たり4本あるものの、4月―9月末が9時台から17時台、10月と11月は9時台から16時台だけです。

 これは姫路大博覧会の閉幕後に利用者が激減し、終盤には運行本数が少なくなったためです。当初は100万人と想定していた年間利用者数は20万人台から40万人台と低迷。乗車時間がわずか約5分と運行距離が短いのに加え、姫路―手柄山間で大人100円、子ども50円と当時としては運賃が高かったことが響きました。

【マジでカッコいい…】これが現役時代の「姫路モノレール」です(地図/写真)

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