いよいよ「水素エンジンの大型船」続々登場へ! “化石燃料へ回帰”でもむしろ安くなる? 国内3社で世界をリード
川崎重工業、ジャパンエンジンコーポレーション、ヤンマーパワーソリューションの3社が、舶用水素エンジンの陸上運転に成功しました。ゼロエミッション船の実現に向けた国産技術の大きな前進として注目されます。
「燃やしても有害なものは出てこない」化石燃料復権でも“強み”
川崎重工が開発している中速4ストロークDF(2元燃料)水素エンジンは、同社が建造を目指す4万立方メートル型の液化水素運搬船に搭載されます。今回、公開された陸上実証機とは別に実船実証用のエンジンを製造し、2028年3月に出荷。液化水素運搬船による実証は2030年度に行われる見込みとなっています。
液化水素運搬船は国際水素サプライチェーンの構築に向けて、川崎市扇島のJFEスチール東日本製鉄所京浜地区跡地で建設が進められている液化水素の国内基地を使った商用化実証に投入されることが決まっており、海外での航行試験なども行っていきます。
同社エネルギーソリューション&マリンカンパニー舶用推進ディビジョン長の政本憲一理事は「水素は燃やしても有害なものは出てこない。そこが利点だと思う。米トランプ政権の化石燃料重視という流れがあっても、例えば天然ガスから(化石燃料由来の)ブルー水素を作るという点ではブルー水素の値段が下がることにつながり、若干追い風になるだろう。CO2を回収する技術も同時に開発し、トータルでゼロを目指すことに取り組んでいる」と話します。
また、川崎重工は舶用水素燃料タンクと燃料供給システムで構成するMHFS(マリン・ハイドロジェン・フューエル・システム)の開発も担います。
中高速4ストローク水素エンジン用のMHFSは40フィートコンテナサイズにシステム一式をパッケージ化。低速2ストローク水素エンジン用の高圧MHFSは、舶用・燃料供給用としては世界最大の200立方メートルの液化水素タンクなどを設けるとともに、機器類をユニット化して船上の施工を容易化します。
今後の見通しについてJ-ENGの川島社長は「大型の外航船はアンモニアが中心で、水素は内航船や近距離を走る船を中心にまず動いていくのではないか」と話します。
現在、「HyEng」では造船所と共に、東京―博多間を航行する内航RORO船を想定した水素燃料船のコンセプト設計を行っています。インフラの整備やバンカリング(船舶への供給)などの課題はあるものの、水素を使用した船の実現と普及に向けて着実な歩みが続いています。
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。





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