新幹線に存在する「唯一の踏切」とは? 最新車両の“バッテリ自走”で乗ったまま通過してみた

時速200km/h以上で走る、いわゆるフル規格の新幹線に「踏切」が1か所だけあります。しかも大動脈である東海道新幹線にです。

N700Sが「バッテリ自走」で踏切を通過

 2025年10月25日と26日に開催された「JR東海 浜松工場へGO」ツアーでは、浜松駅~浜松工場の一部区間において、N700Sが初めてバッテリ自走による営業運転を行いました。

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バッテリで自走するN700Sの車内。予備灯以外の照明が消え、空調も停止する(乗りものニュース編集部撮影)

 このイベントは、首都圏、中部、関西、静岡地区から団体専用列車で浜松工場に直接入場し、工場に入場中のN700系や保守用車などを見学可能なツアーで、例年開催されています。

 最新のN700S新幹線は、災害などで停電が発生した場合でも、16両のうち8両(2、4、7、8、9、10、13、15号車)に搭載したリチウムイオンバッテリを使い、30km/h程度で自走可能なシステムを搭載しています。ツアー参加者は、このバッテリ自走を体験することができたのです。当日に運転された、東京駅から浜松工場まで直通する団体臨時列車に乗ってみました。

 東京駅から浜松駅までは、通常の新幹線と全く同じルートで走ります。「非日常体験」が始まるのは、その先の区間からとなります。列車は浜松駅を過ぎると、その先でしばらく停車します。ここで通常の運転士から浜松工場に所属する運転士に交代し、スイッチバックして浜松工場への引き込み線に入線します。

 バッテリ自走が始まると、車内は座席上の荷物棚付近に設けられている予備灯以外の照明が消え、空調も停止し、静かに進んでいきます。

 この引き込み線の最高速度は30km/hで、新幹線とは思えないほど、ゆっくりと走ります。東海道新幹線では、定期列車が走る区間でスイッチバックすることはないため、逆向きに流れる車窓も新鮮です。

 列車は高架から降りて地上を走り、住宅地の中を進みます。そして工場に到着する寸前で、踏切を通過しました。「一瞬」の出来事でしたが、踏切には列車が通過する前から、多くの人が集まっていました。列車はそのまま、工場内にあるホームに滑り込みました。

 乗っている分には一瞬ですが、東海道新幹線のN700系列は16両編成で、全長は電車としては日本一長い404m。外からは、通過が相当長く感じるはずです。

 なおN700Sには、2026年度から28年度にかけて投入される3次車から、停電時でもバッテリによって空調を稼働させる機能が搭載されます。バッテリ自走と空調機能の併用はできないものの、夏が災害級の暑さとなる昨今においては、非常に重要な備えとなります。

【画像】これが新幹線「唯一の踏切」です

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