「戦闘機買います」ウクライナ署名でフランスひと安心!? お互いwin-winなその意義 本当の“策士”は誰だ?
ウクライナがフランス製「ラファール」戦闘機の導入に向けた意向書に署名しました。その背景には、フランスなどが進める次期戦闘機開発計画の遅れがあり、フランス側の事情も見えてきます。
フランスの“深謀遠慮” ウクライナはそれに乗った?
フランス政府は2020年12月に、現在同国海軍が運用している原子力空母「シャルル・ド・ゴール」の後継艦として「PANG」の建造を決定しています。この時フランス軍事省が公開したPANGの飛行甲板には、FCASで開発が予定されている有人戦闘機の艦載機型が搭載されていましたが、2022年10月にPANGの建造を担当するナバル・グループが公開したPANGの飛行甲板には、FCASに加えてラファールの艦載機型「ラファールM」も並んでおり、FCASとラファールMの搭載機数が半々程度になっていました。
またダッソー・アビエーションは2025年6月に開催された「パリ国際航空宇宙ショー(パリエアショー)」に、「ラファールF5」のコンセプトモデルを出展しています。これは背面にコンフォーマル燃料タンクを装着し、「CCA」(協調戦闘機)と呼ばれるUAS(無人航空機システム)と協働する次世代機です。
これらから、FCASで有人戦闘機の開発が中止になった場合、フランスが第6世代戦闘機を単独開発するのか、あるいはラファールF5とCCAを組み合わせる空中戦闘コンセプトに舵を切るのかという可能性が見えてきます。どちらに転ぶか予想するのは難しいものの、いずれにせよ、フランスの戦闘機開発・製造基盤を維持・成長させていくためには、ラファールの受注獲得が不可欠となります。
前に述べたように、ウクライナの新戦闘機導入計画には資金面での不安がつきまとっています。ウクライナはヨーロッパ連合(EU)の融資を見込んでいるようですが、EU加盟国間の意見の不統一で実現は不透明な状況になっています。
これはうがった見方なのかもしれませんが、EU内で大きな発言権を持つフランスから融資の件で援護射撃をしてもらうために、このタイミングでラファールの導入を明文化したのだとすれば、ゼレンスキー大統領は世間一般で思われている以上の「策士」なのかもしれません。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。





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