「電気機関車が牽く客車列車」の歴史に幕――“死神”が牽いたJR東日本「最後の列車」に乗る 幹部が明言した機関車の今後

JR東日本が電気機関車の旅客列車運用に幕を閉じました。残念がる愛好家らが押しかけましたが、他の用途で使われる可能性はあるのでしょうか。

「特急よりもノンストップ」というはなむけ

「ありがとうEL号」には新津―会津若松(福島県会津若松市)間の蒸気機関車(SL)列車「SLばんえつ物語」に使っている12系客車7両が充当され、新津側にEF81形140号機、長岡側にEF64形1030号機をつなぎました。

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新津駅の電光表示器に記載した「ありがとうEL号」2号の発車案内。牽引するEF64の先頭部のイラストが美しい(大塚圭一郎撮影)

 1号は長岡10時55分発新津11時42分着、2号は新津12時20分発長岡13時5分着、3号は長岡13時57分発新津14時44分着、4号は新津15時44分発長岡16時35分着。全車指定席で、乗車には運賃のほかに指定席券またはグリーン券が必要です。

 筆者が長岡駅で新津行きの1号に乗り込むと、中間の4号車の展望車には「乗車記念スタンプ」が置かれていました。押印すると、普段運用されている「SLばんえつ物語」の牽引機であるC57形180号機のイラストとともに「Since1988 SLばんえつ物語 新津↔会津若松 おかげさまでご乗車100万人達成!」の文字が現れました。車内の売店は営業しておらず、ハガキを郵送できるポストは投函口に「本日の取集は終了しました。」の貼り紙をして入れられないようにしていました。

 出発時に乗務員が列車無線で交信し、前後の電気機関車が「ピー」という警笛を鳴らすのを聞いて「客車列車に乗っている」との実感が湧きます。

「ハイケンスのセレナーデ」のメロディーで幕を開けた車内放送は、EF64形とEF81形が前後に連結されていることを紹介して「長年にわたり、日本の鉄路を支えてきた両形式の機関車に感謝の気持ちを込めた特別な記念列車です。鉄道の歴史に思いをはせながら、両機関車の力強い牽引とともに、車窓からの風景をお楽しみください」と呼びかけました。

 EF64形とEF81形の特徴の説明に続いて「鉄道の昭和、平成、令和と三つの時代を駆け抜けた名機が、皆様を鉄道の街・新津へとお連れします」という含蓄のある文言で締めました。一方、長岡行きの列車では「鉄道の昭和、平成、令和と三つの時代を駆け抜けた名機が、皆様を機関車ゆかりの地・長岡へとお連れします」と語りかけました。

 走行中はレールの伸縮継ぎ目を車輪が通過する音がテンポよく響き、所々で鳴らされる警笛も相まって鉄道旅行ならではの旅情に包まれます。

 そして、「ありがとうEL号」は快速にもかかわらず、特急列車より停車駅が少ない“逆転現象”も体験できました。というのも、特急「しらゆき」(新潟―上越妙高・新井)は長岡―新津間の途中で見附、東三条、加茂の3駅に止まるのに対し、「ありがとうEL号」はノンストップで駆けたのです。

 見附駅では新潟発上越妙高行き「しらゆき」4号の交直流両用特急形電車E653系が停車しているのと反対方向の線路を、「ありがとうEL号」が素早く通過するという珍事が見られました。

【撮り鉄も大集結!】これが電気機関車牽引「最後の旅客列車」の様子です(写真)

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