「関西人がサンマを食べられるのはこのフェリーのおかげ!?」 新造船デビュー「日本海の最長航路」の“強み”とは?

新日本海フェリーが舞鶴―小樽航路に21年ぶりとなる新造船「けやき」を投入しました。個人旅行のニーズに応えた客室や、物流の「2024年問題」に対応する設備を備え、大きな期待が寄せられています。

関西で「サンマ」を食べたら思い出せ!?

 ドライバーの時間外労働の上限規制などで人手不足と物流の停滞が懸念されている「2024年問題」の対策や、二酸化炭素(CO2)排出量の削減といった環境負荷の低減が求められる中、新日本海フェリーでは海上輸送へのモーダルシフトのメリットを積極的にアピールしています。

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マリネックスの車両と新造船「けやき」(深水千翔撮影)

 トラックでフェリーを利用した場合、乗船時間がドライバーの休息時間となるため、約21時間かけて舞鶴と小樽を結ぶ新日本海フェリーの航路は十分な休息を確保しながら移動できる最適な選択肢と言えるでしょう。

 入谷社長は「舞鶴―小樽航路は長距離ということもあって、かなり無人車の航運送割合が多い。ざっくりとしたデータにはなるが、だいたい80%から85%ぐらいが無人車やトラックといった貨物で占められている」と述べ、「『2024年問題』もそうだが、全体的にドライバーが高齢化している中、無人化の傾向は進むのではないか」と今後の見通しを示しました。

 新日本海フェリーは、運航しているフェリーの高速性を生かし、航空便と同じリードタイムでの大量輸送ができることをセールスポイントとしています。同社ではグループのマリネックスが陸送部門を手掛けており、全国の拠点に配備されたトレーラーと各フェリー航路を組み合わせた海陸一貫輸送を行っています。

「従来のユーザーも自社でクルマを動かさなくても、マリネックスをご要望いただければ、ドアツードアのサービスを提供することができる」(入谷社長)

 これまで舞鶴―小樽航路に就航していた「はまなす」が全長224.8mで航海速力が30.5ノット(56.5km/h)だったのに対して、新造船である「けやき」は全長199mで航海速力は28.3ノット(52.4km/h)と経済性を重視したスペックになりました。一方でトラックの積載台数は150台を確保するともに、運航ダイヤもこれまでと変わりません。

 舞鶴市の鴨田秋津市長は「今から55年前、日本海側で初めて長距離フェリーとして就航したのが舞鶴―小樽航路だ」と振り返り、「私たち関西人が当たり前のように生乳を飲め、そして当たり前のように魚屋さんやスーパーで生のサンマが買えるのも、実は新日本海フェリーのおかげであり、これまで地域全体の発展に多大な尽力を賜ってきた」と話しました。

 また、武田副知事は2番船「はまなす」の建造が進んでいることに言及。「新日本海フェリーで取り扱われる貨物量は、京都・舞鶴港全体の貨物量の半数を占めており、舞鶴―小樽航路はまさに舞鶴港の基幹航路となっている。同航路に積極的な投資を進めていることを大変心強く感じている」と話します。

 そのうえで「京都府としても、地域観光への推進や、荷主へのセールス活動、ニーズに応じた港湾整備を通じてより一層、京都・舞鶴港の振興に取り組んでいきたい」と強調しました。

【え…!】「業務用」ドライバールームまで豪華すぎる「けやき」船内(写真)

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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