なぜ日本のEVバスは「中国BYD」だらけ? 国内企業が勝てない“価格と実績”の壁
街中で静かに走るEVバスの多くが、実は中国「BYD」製であることをご存じでしょうか。日本のEVバス市場でトップシェアを握る同社。なぜ「自動車大国ニッポン」で中国製が選ばれるのか。その理由は、圧倒的な「価格」と「実績」の壁にありました。
世界7万台の「実績」と、欲っしても買えない「国産の不在」
「でも、中国製のバスって壊れやすいのでは?」という不安もあるでしょう。しかし、ここでもBYDには強力な武器があります。それが「世界での実績」です。
BYDのEVバスは、すでに世界50か国以上で導入され、累計で約7万台以上が走っています。多くの地域で使われているという事実は、「みんな使っているから大丈夫だろう」という安心感を日本のバス会社に与えています。
翻って、日本のメーカーはどうでしょうか。バス会社が「国産を買いたい」と思っても前述したように「売っていない」というのが実情です。
日野自動車が小型EVバス「ポンチョZ EV」の発売を凍結したのは2023年のこと。理由は、部品の有害物質(六価クロム)問題などでした。いすゞ自動車が発売した「エルガEV」は、高額であり、また大型に区分されるサイズゆえに、投入できる路線は限定されます。
とはいえ、環境対策(脱炭素)の期限は待ってくれません。全国のバス会社の9割以上が赤字経営といわれるものの、これまた対応せざるを得ず、現実的な選択肢としてBYDを選んでいるのです。
「国産が出るのを待ちたいが、高すぎて買えないし、いつ出るかもわからない」。そんなジレンマの中で、各地のバス会社は決断しています。
日本のバス市場が「BYDだらけ」になったのは、単に安いからというだけでなく、バッテリー技術に裏打ちされた安全性と、国産メーカーが足踏みしている間に積み上げた実績の結果でした。
私たち乗客にとっては、バスがどこの国の製品かということ以上に、排気ガスを出さず、静かで快適に移動できるかどうかが重要です。
日本メーカーの巻き返しにも期待したいところですが、現時点ではBYDのバスが日本の公共交通を支える「頼れる足」になっていることは間違いありません。





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