小泉大臣「中国から演習の事前通告なかった」←ナゼ問題? 紐解くカギは“海のルール”にアリ

中国戦闘機による空自戦闘機へのレーダー照射が日中関係に大きな影響を及ぼしていますが、そのような中で小泉防衛大臣が「(事案発生時に)中国軍から演習実施を通知されていなかった」ことを明らかに。法的な問題はあるのでしょうか。

過去には事前通告したけど「それダメ」な例も

 ちなみに、中国軍による軍事演習と日本のEEZを巡っては、3年前の2022年にも大きな問題が起こっていました。2022年8月4日、アメリカのペロシ下院議長(当時)が台湾を訪問したことを受けて、かねてから台湾に対して軍事的威圧を行っていた中国が、台湾を包囲するような形で周辺海域に弾道ミサイルを発射・着弾させたのです。

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防衛省が発表した2022年8月4日に中国軍が発射した弾道ミサイルの弾着海域図(画像:防衛省)。

 このとき、中国は事前に軍事演習を実施する海域を図示して、船舶や航空機の進入を禁じる旨の公示を行ったのですが、そのなかに日本の排他的経済水域も含まれていたのです。そして、中国軍が発射した弾道ミサイル9発のうち、5発が実際に与那国島南方沖に広がる日本のEEZ内に弾着したことが、防衛省により確認されています。

 これを受けて、当時の岸防衛大臣は臨時会見を実施し、中国の行為を次のように非難しました。

「わが国EEZを含む、わが国の近海に設定された訓練海域に弾道ミサイルが落下しており、わが国の安全保障及び国民の安全に関わる重大な問題であります。強く非難いたします。また、中国に対して外交ルートを通じ抗議をいたしました」

 このように、日本政府は中国側の演習実施を強く非難したわけです。なお、このとき中国は事前に訓練実施海域を公示しており、一見すると日本に対して「妥当な考慮」を払っているようにも思えます。しかし、たとえば軍艦による実弾射撃ならば、仮に誤って民間船舶が演習区域内に進入してきた場合、即座に演習を中断することができます。しかし、弾道ミサイルの場合は一度発射すればこれを呼び戻すことはできないほか、そもそも着弾海域周辺における民間船舶の有無を正確に確認することも難しいと言えます。

 事前に通告している海域に入ってくる方が悪い、という意見もありそうですが、そもそもEEZ内の航行は自由であり、演習海域を他国の船舶が航行することを止めることはできません。こうした理由が重なって、日本政府としては中国による「妥当な考慮」が払われなかったとして、抗議に踏み切ったと考えられます。

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Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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1件のコメント

  1. 自国の不都合な発信をする国が、他国を威嚇する意図をもって実施する演習という名の威嚇行為を許すべきではなく、世界平和を誠実に希求する日本は、臆することなく世界各国に、武力を用いて他国に危害を加え或いは威嚇する周辺国の実態を明らかにすべきである。特に東シナ海を自国の庭のように主張する国と第三次世界大戦の発端となる侵略行為を行っている国についてしっかりと主張を展開することを政治家に望む。