「日本の軽」は海外に食われるのか? “日本独自規格”脱出への壁 「海外で売っていいよ」と言われても簡単じゃない!?

日本の軽乗用BEVが、にわかに注目を集めています。これまで日産・三菱の独壇場だった市場に、ホンダや中国のBYDが相次いで参戦。また海外でも日本の軽を参考にした小型車枠の新設の動きが相次いでおり、競争の激化は必至です。

海外への軽EV“逆進出”もありうる?

 BYDやヒョンデの動きが良い例ですが、これまで日本独自の規格であった軽自動車は、近年では海外からも大きな注目を集めています。

 以前から軽トラックへの人気が高まっていたアメリカでは、2025年12月にトランプ大統領が“TINYCARS(超小型車)”のアメリカでの製造・販売を認める方針を表明しました。この“超小型車”に軽自動車が含まれるのかは不明ですが、今後の動向に注視が必要です。またEU(欧州連合)においても、日本の軽自動車規格を参考にした「E-car」という小型EV枠を新設する可能性があると報じられています。

 ではBEVモデルをはじめ、逆に国産メーカーの軽自動車が海外進出を本格的に始める可能性はあるのでしょうか。

 日産自動車の関係者によると、可能性はゼロではないものの、軽自動車はあくまで日本国内向けに作られており、ハードルはかなり高いのだそう。たとえばアメリカで販売する際には、同国の安全基準である「連邦自動車安全基準(FMVSS)」をクリアしなければならず、そのためには大規模な投資が必要となります。

 また、そもそもFMVSSには日本の軽自動車に適用される区分がありません。近しいクラスに当たるLSV(低速車)の区分は、最高速度が約40km/h以下に制限されており、これも日本の軽自動車には当てはまりません。実際にアメリカ国内で軽自動車を販売するには、規制免除などの優遇措置が不可欠であり、道のりは険しそうです。

 一方、欧州で検討されている「E-car」の枠組みは、車体のサイズや重量、モーター出力に上限を設ける代わりに、安全要件などは緩和する方向だとか。細い道やアップダウンの多い欧州の街は、日本の軽との親和性が高いと感じます。

 軽BEVは今後、日本国内での激しい競争に加え、主に欧州などで国産メーカーの販売戦略のカギを握る可能性が出てきています。

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Writer:

カーライフ・ジャーナリスト。20年以上に及ぶ国内外での取材経験を生かし、雑誌・ウェブサイト・TV・ラジオ・トークショーなどに出演・寄稿する他、安全&エコドライブのインストラクターも務める。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(2006年〜)。現在はYoutube「クルマ業界女子部チャンネル」でもユルく楽しいカーライフ情報を発信中。

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