実績乏しい日本の「武器」も輸出へ? フィリピンが熱視線を送るのは「日本の誠実さ」
日本からフィリピンへ、殺傷能力を持つ防空ミサイルの輸出が検討されていると報じられました。背景には日本の防衛装備品の輸出ルール緩和の動きがあり、これまでのフィリピンへの実績も交渉を後押ししているようです。
殺傷兵器も輸出OK? 「5類型」撤廃がカギ
2025年11月30日、共同通信など複数のメディアが、日本政府がフィリピン政府との間で、陸上自衛隊が運用している防空ミサイル「03式中距離地対空誘導弾」(中SAM)の輸出に関して、非公式な協議を行っていると報じました。
日本政府は2014(平成26)年に、防衛装備の輸出規制と、その運用面の原則を定めた「防衛装備移転三原則」を国家安全保障会議と閣議で決定しています。これにより日本で開発された防衛装備品の輸出は可能になったのですが、運用指針で輸出可能な防衛装備品は「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」という、直接戦闘に使用されない5つの用途(5類型)と定められており、殺傷能力を持つミサイルは対象外です。
政権与党の自民党と、同党と連立を組んで閣外協力を行っている日本維新の会は、2025年10月に締結した連立合意書で、2026年に5類型を撤廃する方針を明記しており、12月2日付の読売新聞は、政府・与党が2026年春にも撤廃する方向で調整に入ったと報じています。
5類型の撤廃と、それに伴う殺傷能力を持つ防衛装備品の輸出には、賛否両論あってしかるべきだと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思いますが、政府・与党の方針がスムーズに進行すれば、フィリピンへの中SAMの輸出は、実現する可能性が高いとも思います。
12月2日付の読売新聞は、日本政府がフィリピンとの間で、情報収集や軍の指揮統制を行うシステムについても、輸出に向けた話し合いを行っていると報じています。
情報収集・指揮統制システムは、おそらく5類型の撤廃を必要としなくても、輸出は可能だと考えられます。防衛装備移転三原則の前身である「武器輸出三原則」により、日本は長年、防衛装備品の輸出が事実上できなかったため、欧米諸国などの製品やシステムに比べれば日本製の防衛装備品は実績に乏しいと言わざるを得ません。
この導入にフィリピンが前向きなのは、日本との関係を強化したいという思惑などもあるのでしょうが、これまで日本がフィリピンに対して行ってきた防衛装備品の輸出(移転)が、誠実な形で行われてきた事も、大いに影響していると筆者は思います。





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