実績乏しい日本の「武器」も輸出へ? フィリピンが熱視線を送るのは「日本の誠実さ」

日本からフィリピンへ、殺傷能力を持つ防空ミサイルの輸出が検討されていると報じられました。背景には日本の防衛装備品の輸出ルール緩和の動きがあり、これまでのフィリピンへの実績も交渉を後押ししているようです。

法律のハードルも「なんとかしましょう」の実績

 日本は2016年、海上自衛隊が運用していた「TC-90」練習機をフィリピンに貸与しています。フィリピン海軍はTC-90を練習機ではなく、洋上哨戒機として運用していますが、洋上哨戒機は5類型に含まれますので、この点は問題になりませんでした。

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フィリピン北部ラウニオン州サンフェルナンドの空軍基地に設置された日本製の警戒管制レーダーシステム。2023年に輸出された(画像:フィリピン空軍)

 ただ、日本の財政法は国有財産の無償譲渡や実勢価格より安い価格での売却を禁じていますので、原型機(モデル90)の中古機価格での売却を求めた日本と、無償供与を求めたフィリピンとの交渉は難航しました。このため日本政府はフィリピンの財政事情を考慮して、2機を貸与の形で引き渡し、その後2017年の自衛隊法改正を待って、3機を無償で譲渡しています。

 防衛装備品を輸出した国で早期に戦力化してもらうためには、基幹となる要員に充実した教育訓練を提供する必要があります。海上自衛隊はTC-90の移転にあたってフィリピン海軍の要員を日本に招聘し、海上自衛隊の基地で教育訓練を行いました。この甲斐もあってTC-90は2018年1月から哨戒機としての任務を開始。フィリピン海軍からの評価は高く、追加導入も検討されているようです。

 そしてフィリピンは2023年に、三菱電機が開発した警戒管制レーダーを約1億ドルで導入しています。このレーダーの輸出は、防衛装備移転三原則から現在までの間で、唯一成約した日本製防衛装備品の輸出案件です。

 このフィリピンへの輸出に携わった防衛省・自衛隊の担当者の方々は、どれだけ充実した教育訓練とアフターサービスを提供できるかが、競合した外国企業との勝敗のカギの一つだったと述べていました。

 フィリピンに対しては、海上自衛隊からの退役が予定されている、あぶくま型護衛艦の輸出も取りざたされています。

 この話が実現した場合、海上自衛隊がTC-90と同様、フィリピン海軍の基幹要員を日本に招聘して教育訓練を行うのかはわかりませんが、防衛省は発展途上国への防衛装備品への輸出にあたっては充実したアフターサービスの提供が重要だと考えているようです。そのためか、防衛装備庁は2025年9月に、「東南アジアにおける艦艇の維持整備体制」つまりアフターサービス体制の構築に向けた細部検討役務の一般競争入札を行っています。

 フィリピンは2010年代に入って、力による現状の変更をいとわない中国の海洋進出が活発化したことにより、中国との領土係争が発生しており、マルコス政権は「CADC」(包括的群島防衛構想)と呼ばれる方針に基づいた国防力の整備を推進しています。TC-90やレーダーの導入も、中SAMや情報収集・指揮管制システムの導入交渉も、この構想の実現に向けたものでしょう。

【え…!】これがフィリピンへの輸出装備品の「本丸」です!(写真)

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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