アメリカの新型フリゲート「すぐ造れます!」←ホントに大丈夫? ベースのフネに数々の懸念 2度の中止でもう後がない!?
アメリカ海軍は建造を中止したコンステレーション級フリゲートの代替として、沿岸警備隊のカッターをベースにした新型艦の建造を指示しました。しかし、「迅速な建造」を目指すこの計画には、過去の事例から見ていくつかの懸念点が浮かび上がっています。
元「警備艇」では軍艦の任務に耐えられない?
アメリカ沿岸警備隊のカッターは、有事の際にはアメリカ海軍の指揮下で運用されるため、他国の沿岸警備隊が運用している警備艇や巡視船に比べれば頑丈に作られています。このため、レジェンド級と交代してアメリカ沿岸警備隊を退いたハミルトン級カッターは、1960年代後半から70年代に建造された老艦ですが、フィリピンやスリランカ、ナイジェリアなどで軍艦として第二の人生を送っています。
筆者は2019年にシンガポールで開催された海洋防衛装備展示会「IMDEX ASIA 2019」で、フィリピン海軍のフリゲート(後に哨戒艦に艦種変更)「グレゴリオ・デル・ピラール」として第二の人生を送っているハミルトン級カッター「ハミルトン」を取材する機会を得ました。
フィリピン海軍は同艦を含めて3隻のハミルトン級カッターを取得し、デル・ピラール級フリゲートとして再就役させています。フィリピン海軍は当初、同級に対艦ミサイル「ハープーン」の追加装備を計画していましたが、実現することなく終わっています。
なぜハープーンの追加装備が行われないのかを、フィリピン海軍の担当者に尋ねてみたところ、「最大の理由は予算不足だが、元がカッターで、本格的な軍艦に比べれば船体強度が低いデル・ピラール級では、ハープーンの運用には不安があることも、計画が実現していない大きな理由だ」と述べていました。
アメリカがレジェンド級の設計をそのまま新型フリゲートに流用するとは思えませんが、設計変更に伴って生じるコストと時間が、フィーラン長官の言う「迅速」な建造の障害になり得るのではないかと筆者は思います。
カギを握りそうな「ミッションパッケージ」
フィーラン長官は新型フリゲートが、ミサイルのVLS(垂直発射装置)を搭載せず、代わりに任務に最適化したミッションパッケージを載せ替える艦になるとも述べています。
それが具体的にどのようなものになるかはわかりませんが、現状ではミサイル発射装置や各種無人機などをコンテナに収容したものが、艦艇に搭載されるミッションパッケージと呼ばれています。
デンマーク海軍のアブサロン級フリゲートのように、ミッションパッケージの載せ替えで支障が生じていない艦もありますし、ミッションパッケージのコンセプトも当時に比べて洗練されていますが、2000年代に設計されたLCSが失敗作だと見なされている大きな原因の一つは、ミッションパッケージの完成度の低さにあったと言われています。この点が、設計や船体構造以外での新型フリゲート成功のカギを握るかもしれません。
アメリカ海軍は新型フリゲートや2025年12月23日に建造計画が発表された「トランプ級戦艦」などで「黄金艦隊」を構築する考えを示しています。その艦隊で「ワークホース」となる新型フリゲートの開発に失敗すれば、黄金艦隊もまた、画に描いた餅になる可能性があると筆者は思います。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。





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