JR北海道だけではない、ローカル線廃止の危機

線路と共に消える「地域の未来」

 現在と過去のダイヤを比較してみましょう。現在、東城~備後落合間の列車は上下3本ずつです。備後落合駅で双方の列車は折り返します。乗り継ぎに便利な列車は、朝の三次方面と14時30分ごろの新見方面、三次方面だけです。乗車機会が少ないうえに、乗り継ぎも不便です。

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現在の芸備線のダイヤ。水色は快速。広島付近は列車が多く走るが、備後落合付近は閑散としている。乗り継ぎに便利な列車は3本だけ(列車ダイヤ描画ソフト「OuDia」で作成)。

 過去のダイヤを見てみましょう。1988年3月13日に行われた、JRグループが発足して初めての春のダイヤ改正では、東城~備後落合間は上下8本あり、ほとんどの列車が広島駅を発着する直通運転でした。広島市近郊より少ない本数とはいえ、現在よりずっと便利でした。

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1988年3月改正ダイヤ。青い線は急行。備後落合駅で分断されず、直通する列車が多くみられる(列車ダイヤ描画ソフト「OuDia」で作成)。

 全体的に比較すると、広島駅付近は現在のほうが運行本数も多く、等間隔で便利そうです。その反面、山間部は運行本数が減っています。乗客が増える地域で列車を増やし、乗客が少ない地域は列車を減らしています。これは合理的な判断といえます。

 しかし、乗客数の少ない区間で運行本数が減れば、乗り継ぎも難しくなり、さらに乗客が減ります。乗客が減るとまた列車も減らす。この悪循環の結果が現在のダイヤだといえます。列車がゼロになれば線路は要りません。つまり廃止です。

 鉄道の廃止は地域の人々の移動手段を減らします。地域の人々はマイカーやバスに乗り換えればいいかもしれません。しかし、路線バスは「停留所の場所がわかりにくい」「停留所の時刻表表記や路線表記が省略されてわかりにくい」「バスが定時に来るかわからない」など、遠方から訪れる旅行者にとって不安な乗りものです。鉄道は駅の場所がすぐわかり、地図にも明確に示され、時刻も正確で安心できます。地方創生のために企業を誘致する場合も、鉄道がある町のほうが受け入れられやすいでしょう。

 鉄道路線の廃止は、地域の交通手段だけではなく、地域の未来も失いかねません。

【了】

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コメント

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11件のコメント

  1. 芸備線、木次線とも、以前は山道の峠越えをしなければならない位、並行する道路は難所でした。
    ところがトンネル、バイパス化、ループ橋などで、道路の方が格段にアクセスが便利になっており、周辺の環境も大きく変化している点も見逃せません。

  2. 確かに、バスは乗り場がわかりづらい。。。アウェイの人にとっては特に。
    乗り場をわかりやすくして、駅のように待合所があって、スマホとかで接近状況がわかるようにすれば断然違うだろう。。。鉄道を廃止するのはやむをえないだろうが、廃止した分、フォローはしっかりしていただきたい。

  3. 民営化されてしまえば当然の結果。国鉄なら赤字でも税金投入(補填)で路線維持出来ても民間企業では収益最優先になり、場合によっては公共インフラだと言う事も2の次になり兼ねない筈。
    民営化推進の自民党政権を多くの国民が支持している実情は、公共交通網の衰退・破壊も望んでいる国民が多いとの現れでしょ?

  4. バスの乗り場が解らないのはバス会社の怠慢です。
    そういった事もせず、「赤字ですから廃止です」なんて言う理由を認めてはいけない。
    乗り場については法令で義務付ければ良いだけなんです。

    鉄道が無くなって困るって言う人は、その原因を考えて下さいね。
    小泉や自民党が簡単に廃止に出来るように制度を変えたからですよ。
    無くなって困る人は投票しなければ良いだけの話ですね。

  5. 国鉄時代の方が赤字路線の廃止に容赦が無かったのに何を言ってるんですか

  6. 廃線は時代の流れで仕方がないと思う。私の街の鉄道(江差線)も50年前は始発から混雑して、座る席もなかったが廃線が決まる数年前には乗客は激減し私一人の貸切状態の日もあった。代替えバスもガラガラである。車の普及に加え、人口が激減しているのだからどうしようもない。

  7. 「鉄道の廃止は(中略)地域の未来も失いかねません。」って、鉄道があれば明るい未来があるとでも?
    先日部分廃止となった留萌線沿線の増毛町は、鉄道があったのに30年で人口半減、中学卒業者数1/4減、鉄道利用者1/10減ですよ。
    鉄道がなくなると地域が衰退するのではなく、地域が衰退すると鉄道が廃止になるのです。
    因果関係を逆にすると、辻褄が合いません。

  8. 公共交通機関の利便性が悪くて使いづらいのと同時に、生活が節約志向になっていて、わざわざ料金を払って公共交通機関を使うことに抵抗があるかも知れません。料金を払って高速道路を使うことに抵抗があるのと同じです。

  9. 車の普及に加えて、節約志向()など様々な要因があるからね。

  10. 線路がつながっていてもダイヤがつながっていなければ鉄道の利用価値はない。
    スジ屋の怠慢。備後落合に列車が着いた時点で乗り継ぎ列車が数分前に出てしまっていて次まで数時間
    ないとかふざけている。
    東城・備後落合間でも東城どまりの列車を備後落合まで延伸させれば列車線をつなぐことができるのにわざとそうしていない。