「中国・パキスタン共同開発の戦闘機」いらなくない? “中東屈指の空軍国”がなぜ導入検討 見つめる先は?

サウジアラビアが、パキスタンと中国が共同開発した戦闘機JF-17「サンダー」の導入交渉を行っていると報じられました。しかし、世界屈指の強力な空軍を持つ同国がなぜJF-17を必要とするのか、その背景には複雑な国際情勢が絡んでいるようです。

「その戦闘機、必要ですか?」すでに群を抜くラインアップのサウジ

 サウジアラビア空軍は2025年1月現在、ユーロファイター・タイフーンを71機、イギリス、ドイツ、イタリアが共同開発したパナヴィア・トーネードを81機、F-15シリーズを211機保有しています。合計364機という戦闘機の機数は、中東では群を抜いていますし、トーネードと1980~90年代に導入したF-15は老朽化が進んでいますが、その一方でアメリカ空軍が導入を開始したF-15EXの準同型機であるF-15SAの導入も進めています。

 現在サウジアラビア空軍が保有している戦闘機はすべて自由主義陣営諸国で開発されているうえ、今後はF-35の導入や、日本、イギリス、イタリアの新戦闘機開発計画「GCAP」への参加も目論んでいます。そんなサウジアラビアが、兵站面の負担が増えるだけでなく、今後の戦闘機導入計画にも悪影響を与えかねない中国との共同開発機であるJF-17を、喫緊に必要としているとは考えにくいのです。

真の狙いは「一石三鳥」か

 2025年1月10日付のディフェンスブログなど複数のメディアは、サウジアラビアがいったんJF-17をパキスタンから購入した後、アフリカのスーダンに供与すると報じています。

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パキスタンはF-16戦闘機も運用している(画像:パキスタン政府)

 スーダンは中国と密接な関係を築いており、スーダンの主要産業である原油の掘削支援や防衛装備品の供給を行ってきました。しかし中国は終わりの見えないスーダン内戦の激化を忌避して、スーダンから分離独立した、スーダンより石油の埋蔵量の多い南スーダンの開発援助にシフトしており、スーダンは強力な後ろ盾を失いつつあります。

 前にも述べたようにサウジアラビア空軍の戦闘機戦力は自由主義陣営諸国で開発された航空機で固められていますが、「ミサイル技術管理レジーム」の制約で欧米から購入できない兵装の搭載が可能なUAS(無人航空機システム)に関しては、中国から「翼龍」を購入するなど、防衛装備の面でも良好な関係を築いています。

 サウジアラビアのJF-17の購入は、パキスタンのサウジアラビアに対する巨額の負債の一部解消を目的に行われるという見方もあります。核兵器も保有しているイスラム教国の雄であるパキスタンの負債を解消し、JF-17の共同開発国である中国ともども関係を深め、さらには中国の撤退によって強力な後ろ盾を失いつつあるスーダンでの影響力を高めたいという、「一石三鳥」を狙ったものなのかもしれません。

【いらなくない?】これが「中パ共同開発の戦闘機」を欲する国の戦闘機です(写真)

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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