米軍パイロットが怖がった「恐るべき撃墜王」の真実 “北ベトナム軍の幻のエース”その正体とは
ベトナム戦争時、アメリカ軍パイロットの間で「トーン大佐」という名が死神のように恐れられました。機首に刻まれた13個もの撃墜マーク。しかし、その正体は戦場の恐怖心が生み出した「幻」でした。
無線傍受が生んだ「怪物」機首に並ぶ多数の赤星にビックリ!
戦争が起こると、大空を巡る戦いは注目を集めることもあって、自国民の戦意高揚を目的として、エース・パイロットが国家的なヒーローとして扱われることが少なくありません。
彼らのなかには「ウクライナの黒いチューリップ」ことエーリヒ・ハルトマンや、「零戦虎徹」こと岩本徹三のような実在の人物がいる一方で、「キーウの幽霊」のように複数のパイロットの戦果が、ひとりのパイロットの戦果として広まる「幻のエース」のようなケースも多々あります。
今から50年以上前、東南アジアで起きたベトナム戦争において、アメリカ軍パイロットたちから北ベトナム(当時)の撃墜王、「グエン・トーン大佐」として恐れられた人物も、後者の例でした。それはいったいどんなエピソードだったのでしょうか。
当時、圧倒的な航空兵力を誇ったアメリカは、戦争初期から多数の航空機を投入し、北ベトナムを空から叩きました。戦争初期こそ、同国空軍は弱小で、アメリカの航空戦力に太刀打ちできる力はありませんでした。しかし戦争の進捗にともなって、ソ連(現ロシア)や中国の支援を受けて徐々に成長、戦争中期以降にはアメリカ軍も無視できないほどの迎撃能力を持つまでに至ったのです。
特に1967年から1972年にかけて、北ベトナム領空へと飛んでくるアメリカの軍用機パイロットを恐れされたのが、グエン・トーン大佐でした。彼の乗機とおぼしき第923飛行連隊所属の機番3020を記されたJ-5(ソ連製MiG-17の中国生産モデル)と、第921飛行連隊所属の機番4326を記されたMiG-21PFには、それぞれの機首に8個と13個の赤星(撃墜マーク)が描かれていました。
アメリカ軍は、北ベトナム側の無線を傍受した結果、この撃墜マークを描かれた機体のパイロットは、トーンまたはフォーンであると推察。これに、ベトナムでは極めて多いグエンの名字と、さらに階級は大佐だという“尾ひれ”が付いた結果、北ベトナムのエース・パイロット、グエン・トーン大佐が誕生したのです。





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