次世代船の燃料は「クリーンだけど猛毒!」海上保安庁が警戒する“新たな危険” 東京湾での「劇物との戦い」間近で見てきた!
2026年2月、東京湾に巡視船や消防艇など10隻が結集。想定されたのは、次世代燃料として期待される「アンモニア」を積んだ巨大船の衝突事故です。現場を指揮する海保幹部が「想定外は許されない」と語る、過酷な訓練の裏側に迫ります。
「次から次に新しいものが出てくる」海保課長が明した本音
訓練はLPG火災が発生したVLGCから乗組員34人は脱出したものの、1人が取り残されているという状況から始まりました。指揮船の巡視船「いず」をVLGCに見立て、まずは船体を冷却するための救助防護放水を消防船「ひりゆう」と海上災害防止センターの消防船「ひいらぎ」が実施。続いて巡視艇「はまぐも」から特殊救難隊が移乗し、エンジンが止まった船体を制御するため、船尾に応急曳航ペンダントの設置を行いました。
乗組員救助後、アンモニア漏洩が確認されたため、引き続き「はまぐも」「ひりゆう」「ひいらぎ」がLPG火災に対応しつつ、機動防除隊が乗り組んだ巡視艇「やまゆり」を放水調整艇に、巡視艇「よど」「たかたき」と横浜市消防局の消防艇「まもり」、川崎市消防局の消防艇「かわさき」が右舷側でアンモニアの拡散を防ぐための放水を実施しました。
「LPGが燃え、アンモニアが噴出しており、それを放水で落とさないといけない。しかし、今度はアンモニア水ができるので、これを希釈する必要がある。一方でタンクも冷却し続けるため、各船艇で異なる放水の役割を持たせていた」(長谷川課長)
今回は連携能力を強化するため、海保の放水調整艇に消防と海上災害防止センターから無線を持ったリエゾン(情報連絡員)が乗り組んでおり、スムーズな連絡体制を構築することで、より効果的な消火活動を行えるようにしました。
訓練を終えて長谷川課長は、「巡視船艇の能力向上と、消防機関や防災機関との連携という二つの目標があったが、両方とも訓練の中でよくできたと感じている」と話しつつ、「例えばメタノールも、火が点いたらなかなか消えない。次世代燃料は始まったばかりのもの、これから始まるものも多く、何が起きるかわからない状況の中で、我々は備えなければならない。専門家や関係機関としっかり連携をしていきたい」と強調していました。
直近、2月11日には明石海峡でケミカルタンカーと漁船が衝突しています。事故が起きたときに、「想定外」として対応できないとならないよう、常日頃の訓練と万一に備えた想定は必須であることを、今回の訓練で改めて感じることができました。
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。





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