イラン情勢悪化で空自の “空中給油機” が出動! 最新の国産輸送機C-2が派遣されない? 知れば納得の理由

緊迫するイラン情勢を受け、2026年3月8日、航空自衛隊のKC-767空中給油・輸送機がモルディブへ向けて出発しました。万一の邦人退避に備えた派遣ですが、最新鋭のC-2輸送機ではなく、なぜ「空中給油機」が選ばれたのでしょうか。

KC-767に白羽の矢が立った2つの理由

 今回の任務にKC-767が選ばれたのには、主に2つの理由があると思います。まず1つ目が、航続距離が長いことです。

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航空自衛隊のKC-767空中給油・輸送機。原型はベストセラー旅客機のボーイング767(画像:航空自衛隊)。

 KC-767は航空自衛隊が保有する輸送機のなかでも、屈指の航続距離を誇ります。たとえば、航空自衛隊のC-2輸送機の場合、36tの荷物を積んだ状態の航続距離は約4500kmになります。

 モルディブ共和国の首都マレからイランの首都であるテヘランまでの直線距離は約4100kmです。もちろん積載量によって航続距離は前後しますし、戦地となっているイラン国内へ直接フライトすることはないでしょうが、余裕があるとはいえません。

 一方、KC-767は30t搭載時で約7200km飛行することができます。参考までにマレからイタリアの首都ローマまでの直線距離が約7300km。イラン周辺各国までの飛行であれば、余裕で飛ぶことができるでしょう。

 そしてもう1つが快適性です。KC-767のベースになっているのは、旅客機であるボーイング767。現在も世界各国で使われているボーイングのベストセラー機です。KC-767に積み込まれる座席は一般的な旅客機のエコノミークラスと同じ仕様で、C-2などの純粋な軍用輸送機と比べると段違いに座り心地がよく快適です。機体には窓は設けられていませんが、それを抜きにしてもC-2やC-130Hといった航空自衛隊のほかの輸送機よりも人員輸送に適しているのは間違いありません。

 中東からの帰国となれば、フライトも長時間となります。ただでさえイランからの退避で疲れているであろう邦人の状態なども考慮すると、乗り心地の良い機体を選定したという側面もあるのではないでしょうか。

 KC-767はすでにモルディブ共和国に到着しており、待機状態に入っています。

 混迷の度合いを増すイラン情勢の影響で、3月9日の日経平均株価も大きく下がるなど、多大な影響を日本経済も被っています。依然として先行きは不透明ですが、いずれにせよ邦人や派遣された自衛隊員、彼ら全員が無事に戻るのを願うばかりです。

【写真】おしりから長い棒を伸ばした自衛隊のKC-767

Writer:

愛知県生まれ。飛行機が好きで航空博物館などを取材するうち、自動車関係の記事や取材も手がけるようになる。ホンダ「シビック Type R」のようなホットハッチが好み。

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