「私は1ミリも悪くない!」自動車もらい事故、「仰る通りです」と言っていた相手が“豹変”するケースとは? “過失ゼロ”という落とし穴

交通事故は双方に過失があると言われますが、それでも自分に非がない“過失ゼロ”の事故もあります。この時、10:0を主張すると損害保険会社が示談交渉を行わないことをご存知でしょうか。

相手は「前言を撤回」した…

 なぜ女性は交渉に手間取っているのか、こう話します。

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過失ゼロで保険会社が出てこないとわかると、相手方は態度を変えることも(画像:PIXTA)

「当初、相手方の過失は10、私は0。相手方が私には過失がないと認めていたのですが、相手の男性は保険会社が出てこないと知った後に前言を撤回。私にも非があると言い出したのです。こっちは全損で、新車が納車される4か月間の代車代金も、相手は最初の1か月しか負担しませんでした。経費がどんどんかさんでいくのに、相手方の保険会社も含めてまったく応じる気配がない。最初に“この事故にあなたの過失はないと話していたのは何だったのかと」

 確かにパンフレットや重要事項説明書には《損害賠償責任がない場合》の示談交渉はできないことは明記していますが、交渉から退くタイミングについて、保険会社と契約者の間には理解の大きなギャップがあります。契約者は保険契約時には事故当事者意識を持てないので楽観的に見過ごしがちですが、保険会社が示談交渉から退く時期はいつか。これがきっちり書かれていないのです。

 過失ゼロになるかどうかは、当事者同士で示談が成立するまで確定しません。それでも保険会社が交渉から撤退すれば、あとは一人で相手(保険会社)と対峙するしかないのです。当事者は前言を撤回することもあります。相手方に過失ゼロを認めさせることは簡単ではありません。

 こうした過失ゼロの事故を保険会社は説明書の中で「もらい事故」と称しています。過失割合ゼロの事故で示談交渉を行わないことについて、例えば、ソニー損保は次のように説明しています。

「保険会社が示談交渉をすると弁護士法(第72条 非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)に抵触する」

 報酬を目的として自分と無関係の事故で法的紛争処理を行う行為は、弁護士法に抵触します。保険料収入を得ている保険会社が、保険金を支払うつもりがない紛争で交渉を行う行為も保険会社を問わず同列とみなされます。

 実は、こうしたケースに備えて、自動車保険では「弁護士特約」を用意しているのです。弁護士はトラブルが予想される交渉を解決するために必要と思うかもしれませんが、むしろ過失ゼロの自動車事故でこそ、安心して示談を決着させるための“立会人”として、必要不可欠な存在なのかもしれません。

 自動車保険でこの点を意識する契約者は少なく、当事者になって初めて知る運転者は多いのではないでしょうか。

【よく見て!】これが「保険会社が手を引く」ケースです(画像)

Writer:

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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