「ブラッドレーなら300両あるよ!」防衛展示会で発見した奇抜な“中古車店”の正体とは!? 実は今の戦場に一番必要な存在?
「ブラッドレーなら300両あります」 歩兵戦闘車をまるで中古車販売店のように語る会社の正体とは。
私たちは防衛企業ではありません」 戦車を蘇らせるのはデトロイトの発想だった
さらに驚いたのは、同社が車両を再生させるスピードです。
「完全に壊れた車両でも60日から90日で再生できます」
担当者によれば、過去にはエンジンも変速機も履帯も失われた状態で搬入された車両もあったそうです。なかには車両内に木が生えていて、本当に使い物になるか怪しい車両もあったとのこと。それでも車体を分解し、損傷部分を修復し、新しい部品へ交換することで、再び戦場を走れる状態まで復元できるといいます。
この驚異的な作業スピードを支えているのは、意外にもアメリカの自動車産業のノウハウだといいます。
「私たちは本当の意味では防衛企業ではありません。考え方はデトロイトの自動車工場に近いものだと思っています。ヘンリー・フォードの精神ですね。工場はテキサスにありますが(笑)」
同社では戦車や装甲車を特殊な兵器として扱うのではなく、エンジンと足回りを持つ大型車両として扱います。そのため、自動車産業が100年以上かけて築き上げてきた大量生産やリビルト、補修部品供給のノウハウを、そのまま軍用車両へ応用できるといいます。
実際、同社が担当するのは主にエンジン、変速機、駆動系、サスペンションといった「クルマ」の部分です。主砲や射撃管制装置などの電子機器類は別の専門企業が担当します。
「戦車を止めるのは敵の砲弾ではありません。燃料系統やエンジン、履帯の故障なんです」
担当者は、戦車整備の本質をこう表現しました。
どれほど強力な火力や装甲を持つ戦車でも、エンジンが故障し、履帯が切れれば戦場ではただの重たい鉄の塊なのです。戦力を維持する上で重要なのは、新しい戦車を作る能力だけではありません。壊れた戦車をどれだけ早く戦場へ戻せるか? ヴェプトスが手掛けているのは、まさにその部分でした。
ウクライナ戦争では、新しい戦車をどれだけ生産できるかと同じくらい、「壊れた車両をどれだけ早く戦場へ戻せるか」が重要な課題になっています。
最新戦車や次世代兵器の開発競争が注目される現代ですが、その陰では「壊れた車両を素早く蘇らせる能力」もまた、軍事力を支える重要な要素になりつつあります。そして近年は、サプライチェーンの混乱や部品不足、生産能力の制約によって、新しい戦闘車両を簡単に作れる時代ではなくなりつつあります。
テキサスの工場で行われているのは、単なる修理や整備ではありません。それは、自動車産業のノウハウを戦場へ持ち込んだ、新しい「戦場のリビルト産業」と呼べるものなのかもしれません。
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info





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