まるで日本の特急?「動力分散方式」にしか見えない「動力集中方式」の新型車、北米で大ヒットも「寒さに弱い」という課題

ドイツの鉄道車両大手シーメンスが開発した北米向け車両「シーメンス・ベンチャー」がヒットしています。しかし、そのユニークな設計ゆえに、寒冷地では思わぬトラブルも起きているようです。

これって“逆転現象”!?

 ひじ掛けには、座席の背もたれを倒すレバーも、ボタンもなかったのです。座面の下にはレバーがあり、こちらは座面を前に出せる機能でした。

 背もたれは倒れないものの、座面および上下に可動するまくらの位置を調整し、フットレストも活用して「お好きなポジションに設定してください」というサービスのようです。

 一方、エコノミークラスの座席は背もたれを倒すことができます。リクライニング機能はビジネスクラスにないのに、エコノミークラスにはあるという“逆転現象”が起きているのです。

「日本の新幹線に乗ったことがある」という隣の席になったカナダ人に座席のリクライニング機能がないことを指摘すると、「本当だ、付いていないね」と言ったものの気にしていませんでした。足元の空間が広いため居住性があり、背もたれの角度は気にならなかったようです。

 そんなビジネスクラスの最大の特色は、食事と飲み物が振る舞われることです。筆者が乗った列車は朝食を用意しており、カートを押した客室乗務員に「温かい食事と、冷たい食事のどちらにしますか」と尋ねられました。

 温かい食事を頼むと、卵と生クリームで作るキッシュ、ミニトマトとキノコ、パン、果物が出てきました。キッシュがおいしく、オンタリオ湖沿いの牧歌的な車窓を眺めながらの朝食でぜいたくな気分を味わえました。

 列車はキングストンへ定刻の11時に到着。東海道新幹線ならば「のぞみ」を東京から新大阪まで乗るのと同じ所要時間ながら、距離は約半分の250km余りです。

「年間を通して最適かつ確実に運行」は本当か?

 動力分散方式のような外観の先頭車を連結したシーメンス・ベンチャーですが、そのユニークな設計が響いてVIA鉄道では2025~26年冬期に列車の運休や遅延が相次ぎました。

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VIA鉄道カナダのビジネスクラスで提供された朝食(大塚圭一郎撮影)

 非営利団体(NPO)のトランスポート・アクション・カナダによると、雪が降っている日に機関車を最後尾にした推進運転をした際、雪が先頭車の客室内に入り込むトラブルが相次いだのです。対策として、2026年1月に全ての列車を対象に、機関車を先頭にして運転することを決定しました。

 ところが終点に到着後、折り返し列車も機関車を先頭にする必要があります。この作業のため、遅れが頻発しました。

 他にも列車の暖房や充電用のUSBポートが使えなくなったり、列車の足回りの車軸が凍結して立ち往生したりするトラブルも発生。ヒット車両のシーメンス・ベンチャーも、厳冬で知られるカナダでの運行には課題を残した格好です。

 シーメンスの広報担当者はシーメンス・ベンチャーについて「年間を通して最適かつ確実に運行できるように設計されている」と強弁しました。そのような共通認識を利用者にも、鉄道事業者にも持ってもらえるだけの万全な対策が求められています。

【だから日本の特急っぽい】これが「機関車じゃないほうの先頭車」です(写真)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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