「デゴイチあげます!」 引き取り手なければ解体も 全国の展示SL、維持はどれほど大変?

「補助金出します」でようやく譲渡決定も

 近年、街の公園や公共施設に展示されていたSLが譲渡あるいは解体された例は、静岡市葵区にある城北公園のD51形146号機、さいたま市中央区役所の9600形39685号機、長崎市中央公園のC57形100号機、福岡県行橋市民会館のD51形10号機などがあります。静岡市のSLは2015年に栃木県真岡市へ、行橋市のSLは2016年に福岡県直方市のNPO法人へ譲渡されましたが、さいたま市と長崎市のSLは2016年と2017年に、いずれも解体されています。

 このうち行橋市では「塗装などは定期的に行っていましたが、老朽化が激しく維持が困難になり、解体も視野に入れて引き取り手を募集しました。しかし希望者がなく、輸送費などに300万円の補助金を計上したうえで再募集し、ようやく決まった」(同市文化課)そうです。引き取った団体で修繕されているといい、「よかった」と話します。

 一方、長崎市は譲渡先を公募することなくSLを解体しています。同市みどりの課は「設置場所である中央公園の再整備にあたりSLの移設を検討したところ、『吊り上げたら壊れてしまう可能性がある』と専門業者から指摘されました。安全な状態にするのは難しく、そのようなものを譲渡することもできないと判断したため、解体しました」といいます。

 ただ、そもそもこのSLは「長崎原爆の投下直後に走った救援列車の記憶を残す」という目的で設置されたもので、「部品を残しその役割を果たそう」という考えも、解体を決めた理由のひとつだそうです。「長崎市内のほか、ゆかりのある長与町にも解体後に車輪がモニュメントとして保存されています」と話します。ちなみに、本格的な修繕を行った場合、「業者からの口頭ベースの見積もりですが、工場への移送費用も含めて1億円ほどかかるのではと言われた」そうです。

 このように、展示されているSLが岐路に立った例がある一方で、地域住民により守られているという例も全国で聞かれます。たとえば愛知県の蒲郡市博物館では、国鉄OBや鉄道好きの市民などからなる「蒲郡SLを守る会」により、屋外展示されているD51形201号機の清掃が40年以上にわたり毎月行われており、2017年9月3日(日)には通算500回を達成しています。蒲郡市博物館は「当館は海に面した場所にありますが、清掃ではSLの全体をていねいにワックスがけしていただいており、潮風から守られています」と話します。

 全国にあるSLのほとんどは、製造から半世紀以上が経過しており、維持管理がますます難しくなっているようです。引き取る側にも、相応の心構えが必要かもしれません。

【了】

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コメント

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6件のコメント

  1. 本当に保存するのなら、維持、管理をどうするのかをきちんと決めてから行うべきだが、なんか日本では安易に人寄せのために物を買ったり置いたり作ったりするだけで、維持管理まで意識が回ってない事がほとんど。せめて、解体して使える部品を他の動態機関車に転用、は、できないか。さすがに。

  2. コイツは難題だな・・・。
    あるとすればJR東日本くらいではないか。

    • JR西日本ももうすぐD51の本線復帰があるはず・・・だが・・・そうか。捻出できる予算の関係もあったか。そっちを忘れてた。

    • いやね、全諸事情を全くの度外視に出来るならば大井川鐵道にやって欲しいとさえ思っているんだけどね。
      叶わぬ話であることは十二分に分かっている、つもりだ・・・。
      そもそも重量オーバーなんだろうな。

  3. 全国的に観光で繁盛している湯布院らしからぬところですね。有名になりすぎて観光客が減ったの?子供のためにはお金を使いなさい。せっせとため込んで何に使う?老人?もうすぐ死ぬ人に使うより、これから頑張る子供たちに生きた銭を使うのがいいのではと思います。私も老人ですのでいりません。

  4. 夏の由布院旅行でこのカマには挨拶してきたんですが、あまりにの荒廃ぶりに悲しくなりました。次の日におとづれた豊後森のピカピカに整備された96と比べあまりに可哀想でした。豊後森の96も引き取って整備したものなので、このD51も豊後森で引き取って整備したらと。貨物の名機が豊後森に並ぶってきっと絵になる気がします。