巨大な自動車専用船、どう動かす? 日本郵船「アリエス・リーダー」、その操船と動力(写真21枚)

衝突回避、最後は人の手で

 TCSのほかにも、以前より「ヘディングコントロール」という自動操舵技術があるそうですが、これは文字通り、船首を設定した方角に向けるだけのもので、たとえば横風をうけ想定コースから外れた場合、方角だけは修正してくれても元のコースへの復帰は人の手で行う必要があります。TCSはこの、「元のコースへの復帰」までを自動で行ってくれるもので、クルマに例えるなら「レーンキープアシスト」に相当するといいます。

 ただ、ほかの船を自動で回避するようなことはまだ不可能といい、クルマのような衝突回避ブレーキアシストが装備されているわけでもなく、2017年12月の時点では、最終的にはやはり人の手で回避するといいます。

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ブリッジにて、計器の解説にあたる藤本和浩 一等航海士(2017年12月17日、乗りものニュース編集部撮影)。

 なお他船については、自船に搭載されたレーダーがスキャンし位置を測定するのみならず、その動きを分析し、現在の進路や速度を維持した場合にもっとも近くなる距離とそこにいたる残り時間を自動で算出してくれるそうで、これを判断の材料にするそうです。また、各船に搭載された「AIS(自動船舶識別装置)」が発信する情報により、動いている方向や船速も把握することが可能で(ただし、漁船や軍艦には搭載されていない場合もある)、先のレーダーのスキャン結果も含めこれらの情報は前述のECDIS画面に重ねることができ、より直感的に他船などの位置把握を可能にしているそうです。

 このように自動化、電子化が進んではいるものの、一方で昔ながらの灯火や旗の掲示、コンパスや双眼鏡による目視確認も並行して行うとのことで、危機回避のための対策は幾重にも張られています。

 なおブリッジに詰める(当直する)人数は、東京湾など混み合う海域はさておき、外洋などある程度船もまばらな海域では航海士と操舵士のふたりだけだそうです。「アリエス・リーダー」の一等航海士 藤本和浩さんは「4時間ごとの当直で船を動かしています」と説明します。

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コメント

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6件のコメント

  1. ほんでも200m以下か、これ超すと車みたいに税金とか港湾使用料でも上がるんか?

  2. 200m超の場合は巨大船として扱われ、航行時や停泊時に制限がかかります(例えば
    特に指定された航路の運航や特定時間の運航制限、あるいは資格のある水先案内人の乗船義務など)

  3. 仙台港のフェリーは必ずタグが引いて出港するのは港が狭いせいなんかな?それにしても3、11の緊急出港と津波を乗り越えたフェリーの凄技にはぶったまげたし、あれ遅れたら港で横転してたかもね?この運搬船も最後は人の手で、と言うあたりに難しさが見てとれます。

  4. 航海士って必要あるのか?
    沖までは水先人が乗ってるし、その後は
    船もあまりいないだろうし。
    船長なんて部屋でゴロゴロしてるだけだろw

    機関士さん、ご苦労様です。

    • ・・・・・・沖合いに出れば船があまりいないってね・・・そういうふうに油断しているから、古今東西素人なら考え付かないような洋上での衝突事故が起こるんだって。ついでに水先案内人ですら不適切な案内をすることもあるし(大昔、鶴見運河で実際ありました)。船長は船長で書類仕事やら陸上との交渉やら航路の微調整(天象気象はもちろん、場合によっては政治的な理由で航路をずらす、と)しなければならないし。機関長の重要さはわかるけど、何かそのコメントは少し違う気もする。

    • 知り合いの外航船航海士は

      内航船: 航海士大変
      外航船: 超暇

      と言ってました。
      間違ってないと思う。