現代の「旗艦」とは? 米第7艦隊旗艦にして最古参「ブルーリッジ」に見るその実情

「フラグシップモデル」「旗艦店」といった表現の基となっている「旗艦」ですが、2018年現在、およそそれらのイメージとはかけ離れたものといえるでしょう。日本にも縁深い、米海軍第7艦隊旗艦「ブルーリッジ」を例にその実情を解説します。

実は「旗艦」がなくなりつつある現在、「ブルーリッジ」が必要な理由

 先ほども述べたように、アメリカ海軍は「ブルーリッジ」を2039年まで運用することを決定し、そのための大規模な改修まで行われました。つまり、アメリカ海軍にとって、「ブルーリッジ」は今後も必要不可欠な存在と考えられていることが分かります。その理由はさまざま考えられますが、特に「ブルーリッジ」がまさに移動司令部であることに由来する理由が大きいのではないかと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は感じます。

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「ブルーリッジ」同型艦である揚陸指揮艦「マウントホイットニー」の指揮所(画像:アメリカ海軍)。

 そもそもブルーリッジのように艦艇の中に司令部を置くという例は現在では珍しく、たとえば海上自衛隊は過去には旗艦を配置していましたが、1963(昭和38)年に海上自衛隊の主要部隊を統括する自衛艦隊司令部が横須賀の陸上施設に移転したため、これ以降旗艦制度は廃止されました。これは、通信能力の進歩によって陸上施設からでも部隊を指揮できるようになったことや、移動司令部を必要とするレベルの活動範囲、ましてや我が国から遠く離れた海域での戦闘を海上自衛隊が想定していなかったためではないかと思われます。

 さらにアメリカ海軍のほかの艦隊も、たとえば東太平洋を担当する第3艦隊や南アメリカ大陸周辺を担当する第4艦隊などは、その司令部をいずれもアメリカ本土に置いています。これは、これらの艦隊がアメリカ本国に近い場所を担当していることや、国家同士が衝突するような安全保障環境ではないことなどが考えられます。

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「ブルーリッジ」同型艦である揚陸指揮艦「マウントホイットニー」のモニタールーム(画像:アメリカ海軍)。

 一方でアメリカ海軍第7艦隊の担当地域は、アメリカ本土から遠く離れた西太平洋の大部分やインド洋までを含む広大な範囲で、そのなかには北朝鮮問題を抱える日本海や、中国による海洋進出が活発化している東シナ海や南シナ海など、紛争の火種になりうるような海域も多く含まれています。そこで、もしアメリカ軍がこうした地域での紛争に関与することとなった場合、「ブルーリッジ」のような移動司令部があればどのような場所であろうと迅速に展開でき、アメリカ軍のみならず現地にいる他国軍ともスムーズな調整ができます。また、平時から「ブルーリッジ」がさまざまな地域に自ら赴くことができるため、他国との相互理解促進やより強力な協力関係を構築できます。こうした理由から、第7艦隊には「ブルーリッジ」が依然として必要なのです。

【了】

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