「夏」のアルピコ&「冬」の長電、繁忙期の運行「支え合い」へ その切実な背景

運転士の負担軽減だけでないメリットも

 長電バスは、このような取り組みは珍しいといい、「繁忙期が重複していないからこそできること」と話します。同社も、人手不足によって減便などを余儀なくされるような事態にはなっていないといいますが、「限られた人数でやりくりするので、繁忙期には運転士ひとりあたりの仕事量がどうしても増えてしまいます。今回の取り組みでそれがラクになるほか、続行便の手配も効率的に行うことができます」と期待をふくらませています。

 一方でアルピコ交通は、今回の取り組みについて別の観点からの効果を指摘します。

「貸切バスや高速バスの収益性を高められることです。これらの収益によって、利益の少ない路線バスの赤字を補っているのは、多くの事業者で共通していると思います。貸切バスの受注を抑制するようなことは、利益をどんどん削ることになり、ひいては路線バスも維持できなくなっていくのです」(アルピコ交通)

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長野電鉄湯田中駅に隣接する長電バスの車庫。湯田中駅は志賀高原方面へ向かうバスの拠点(2016年9月、中島洋平撮影)。

 ちなみに、松本と長野という県内の2大都市を拠点とする両社は、お互いをライバル視しているイメージを持つ人もいるかもしれませんが、それは「大昔のイメージ」(アルピコ交通)とのこと。

「コミュニティバスの『ぐるりん』はもう20年近く共同運行しているほか、両社の営業エリアが入り組んでいるところもあります。たとえば『大豆島保科温泉線』は、当社が長野駅方面から途中の大豆島まで、長電バスさんが保科温泉までの路線を2年前まで別々に運行していて、どちらも不採算であったところを、ひとつの路線として共同運行することで維持しているものです」(アルピコ交通)

 このほか、2018年1月からは、志賀高原と白馬という両社の2大観光地を結ぶ高速バスの共同運行も始まっています。今回の「支え合い」も、結びつきを深める両社ならではの取り組みかもしれません。

【了】

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