消えた駅弁、残った駅弁 鉄道の進化に左右された峠の名物の「その後」

新幹線が走る今も人気の横川駅「峠の釜めし」

 群馬県にある横川駅は、長野までの北陸新幹線が開業した1997(平成9)年10月まで、碓氷(うすい)峠を越えるため全ての列車が停車して機関車の連結や解放(切り離し)が行われていた。同駅では、「峠の釜めし」で全国的に有名な荻野屋が明治の頃から新幹線開業時まで弁当の立ち売りを行っており、ホームで一列に並んだ販売員が去り行く列車にお辞儀をする姿が名物となっていた。

Large 180718 ryshouwaekiben 05 Large 180718 ryshouwaekiben 06 Large 180718 ryshouwaekiben 07
1885年創業の、信越本線・荻野屋の明治末期の掛け紙。
信越本線・横川駅でのかつての駅弁販売風景(画像:荻野屋)
荻野屋の「鳥もも弁当」(900円)。鳥ももが1本まるごと入っていてボリュームたっぷり。

 輸送状況の急激な変化により廃業する駅弁事業者が数多くあった中、荻野屋は、ドライブインなど鉄路以外にも販路を確保して弁当の販売を継続している。2018年は、1958(昭和33)年2月1日に販売を開始した「峠の釜めし」の還暦を記念して、2019年1月まで「60周年記念釜めし」(1500円)を販売している。60周年記念の掛け紙が使われ、ドライブインの横川店や長野店のほか、土・日曜、祝日限定で東京・銀座の「GINZA SIX店」でも販売(平日は事前予約販売)。この機会にぜひ味わってみてほしい。

 信越本線は、1962(昭和37)年まで使われていたアプト式時代の旧線が「アプトの道」として整備され、かつて列車の交換が行われていた旧・熊ノ平駅まで歩くことができる。横川駅に隣接する「碓氷峠鉄道文化むら」には、碓氷峠をはじめ全国の峠で活躍した電気機関車などが保存展示されている。

 横川に来たら、季節ごとに販売されている特別な釜めしも買って「アプトの道」を歩いてみたい。「鳥もも弁当」(900円)や「玄米弁当」(500円)は現地と軽井沢駅でしか買えないものなので、食べ比べてみることをおすすめする。

 アプト式鉄道の頃から碓氷峠を通って母の実家へ帰省していた私にとって、「峠の釜めし」には特別な思いがある。「峠の釜めし」と私の誕生日が一緒というのも、何か運命的なものを感じさせる。

 そういえば、毎年、碓氷峠を通る度にトンネルの数を数えていたけれど、いつもいくつ通ったのか途中で分からなくなってしまった。多分「釜めし」を食べながら数えていたからかも知れない。

Large 180718 ryshouwaekiben 81
『旅行読売臨時増刊 昭和の鉄道旅』。特別企画は「片渕須直監督・のんが語る『この世界の片隅に』ある人・街・景色」、付録は1964年当時の国鉄営業局貨物事務用鉄道路線図。

・旅行読売(Fujisan.co.jp)
http://www.fujisan.co.jp/product/2782/ap-norimono

【了】

この記事の画像をもっと見る(10枚)

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

2件のコメント

  1. 20年ほど前まで高山線の飛騨金山駅で売っていた「栗こわい」の復活を希望したいな。
    おじさん一人で作っていたけど、後継者がいなくなって廃業したんだよね。

  2. >栗こわい
    時刻表に載っており、栗がこわいってどういうことよ????と、思いました。
    それと、中部地方ですとペリカンなんてのもあったような…

    碓氷峠の駅弁ですと、軽井沢のゴルフ弁当食べたかったなあ…
    ゴルフボール型の容器の洋風弁当だったかと。
    小諸の藤村一膳飯もなかなかの逸品でした。