上に電線がないのに電車が走る 地下鉄に多い「サードレール方式」のメリットとは

もうひとつのデメリットは

 もうひとつのサードレール方式の大きなデメリットは、手を伸ばしても届かない高い位置にある架線と違い、線路の横に設置されたサードレールに触れると容易に感電してしまうことにあります。

 そのため現在でも架空電車線方式が直流1500~3000Vまたは交流2万~2万5000Vを使用しているのに対し、サードレール方式は直流600~750Vという低い電圧を用いています。それでも感電の危険性はぬぐえないため、台東区上野にある銀座線の車庫につながる踏切では、歩行者が誤って線路に侵入しないように、通常の踏切とは逆に線路側をゲートでふさぐことで安全を確保しています。

 ちなみに鉄道発祥の国イギリスでは少々事情が異なります。第二次世界大戦前にロンドン南部を中心に路線を展開していたサザン鉄道が、架空電車線方式で電化済の路線を改築してまでサードレール方式の導入を進めたので、今でも近郊区間の1600km以上でサードレール方式が用いられているのです。

 サードレール方式は高速運転に不向きと言われますが、イギリスでは最高速度160km/hで走行しており、構造自体に不利な点があるというわけではありません。結局、問題は高電圧を使えないということにあり、低い電圧ではモーターの高出力化、高速化に限界があり、送電効率も下がってしまうからです。イギリスにおいても英仏海峡トンネルとロンドンを結ぶ高速新線「HS1」と、現在計画中のロンドンとバーミンガムを結ぶ新しい高速鉄道計画「HS2」では交流2万5000Vによる架空電車線方式が採用されています。

【了】

※一部内容を修正しました(8月6日10時30分)

この記事の画像をもっと見る(2枚)

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

12件のコメント

  1. もう一つのメリット、聞いた話だが、サードレールは架線より磨耗に強くメンテナンスが楽というのが。

    • その代わり集電靴のメンテナンスが大変とも聞く。個数多く、押付力強く、デッドセクションの離線繰り返す割に集電部が小さいので。

    • そうですね、確か御堂筋線ではサードレールを60年ぶりに交換したという報道があった。
      まあ駅間の直線レールも数十年使えるそうなので、さもありなん。

  2. 第三軌条方式やリニア式の弱点の一つとして電圧から車両の大型化が厳しい事。
    モスクワ地下鉄も一部路線はあるが、架線方式も多く車両も欧米の地下鉄より大きくて広い。
    欧米は第三軌条方式だから車両規格が小さい場合が多く、大した輸送量じゃないのに混雑してしまう。

  3. 日本では恐らく北大阪急行の延伸区間が最後の第三軌条開業区間になるだろう。横浜、名古屋、大阪は該当路線の延伸計画が具体化されてないし。

  4. 東京近郊の人(含むマスコミ・芸能人)は、サードレールも架線も無くても機関車牽引でさえも「電車」と呼ぶね。 電動機か内燃機か無動力かを問わず、旅客用鉄道車両=電車みたい。

    そういう人たちにはどうでもいい記事だね。

    • 東京近郊に限らず、日本全国一般的にそうでしょう。

    • kapoさん
      全国ではないです。
      東日本なら分からなくもないが西日本だとJRは汽車か列車、私鉄を電車と呼ぶ地域もあるから。
      富山、奈良、香川、愛媛、高知、福井、三重、兵庫あたりがそうです。

  5. 碓氷峠区間の専用機関車 というのは、第三軌条集電だから というよりは、勾配区間で アブト式だった からですね

    その碓氷峠専用機関車も駅構内などは架線から集電していましたし

  6. イギリスの第三軌条、意外性のある速さですね。
    第三軌条は感電被害軽減のため低電圧で高速運転が出来ないというイメージだから
    それなのに160km出すのは凄すぎです。