MRJ、成功の目はまだあるか 他社動向とカギになる「スコープクローズ」とは
大逆転の目は「スコープクローズ」にあり?
「スコープクローズ」は航空会社とパイロットの労働組合が直接結んでいる協約で、条項は会社ごとにばらつきがありますが、「スコープクローズ」でリージョナル旅客機に分類されるエンブラエルの「E175-E2」は、現在の条項では大幅に重量制限をオーバーしています。スコープクローズは3年に1度見直されており、次回の見直しは2019年12月(デルタ航空のみは2019年1月)に行なわれます。このためエンブラエルは次回の「スコープクローズ」の見直しで、重量制限が緩和されることを期待して「E175 E2」の開発ペースを落とし、就航時期を当初予定していた2020年から2021年に先送りしています。
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実のところMRJも、今回「ファンボロー国際航空ショー」でデモフライトを行なった「MRJ90」は、若干制限重量をオーバーしているため、次回の見直しで重量制限が緩和されないと、少なくとも大手航空会社から委託を受けてリージョナル路線を運航している航空会社では運航できないことになります。
ただ、三菱航空機は「MRJ90」の胴体を短縮した「MRJ70」の開発を進めています。「MRJ70」は標準型と航続距離延長型、長距離型の3タイプが開発される予定となっていますが、「MRJ70」の標準型と航続距離延長型は、現在開発中のリージョナル旅客機のなかで唯一、現行の「スコープクローズ」の重量制限をクリアしています。
三菱航空機は2018年からの20年間で、全世界で5077機のリージョナル旅客機の需要があり、そのうちの40%を占める2009機は、アメリカの航空会社の需要であるとの見通しを示しています。もし次回の「スコープクローズ」の見直しで、重量制限が緩和されなかった場合、「MRJ70」を擁する三菱航空機は、アメリカのリージョナル旅客機市場の受注獲得で俄然有利になります。
「MRJ」は設計変更などで5回に渡って納期を延期しており、それが新規受注の獲得に不利な要素となっています。「スコープクローズ」の存在によって「ERJ175 E-2」の就航が延期されたことが、三菱航空機にとって有利な要素となっていることは確かですが、もしさらなる納期の延期が発生すれば、この有利な要素を生かすことができなくなります。そのためにも2020年半ばを予定している、「MRJ90」量産初号機のANAへの納入スケジュールを遵守する必要があると言えるでしょう。
【了】
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