日本唯一、お寺が運営する鉄道 距離も日本最短 しかし「乗ることを勧められない」ワケ
事業者が積極的に乗ることを勧めない!?
ただし鞍馬寺は、便利なケーブルカーの利用を積極的には勧めず、徒歩で坂を上って参拝することを推奨しています。ケーブルカーはあくまでも「登山が辛い人向け」という位置づけです。
なぜなら、ケーブルカーが経由しないつづら折りの坂道の途中には、火の神・三宝荒神(さんぽうこうじん)を祀った「由岐神社」があるからです。豊臣秀頼によって再建された勇壮な拝殿もあり、何よりもここは「鞍馬の火祭り」における中心的な場所です。寺ではケーブルカーへの案内看板とともに、歴史あるつづら折りの道を指して「清少納言や牛若丸も歩いた道です。健康のためにも、できるだけお歩きください」と記した張り紙も掲示しています。
鞍馬寺では、参道に倒木があっても通行の妨げにならなければ放置するほどに「自然のまま」を極力維持しており、山内には貴重な動植物も生息しています。ケーブルカーではなく徒歩を勧める背景には、豊かな自然に自然に触れながら参拝してほしいという思いもあるのかもしれません。
寺院に参拝するための鉄道やケーブルカーは、和歌山県にある南海電鉄の鋼索線(高野山ケーブル)や、東京の京王グループに属する高尾登山鉄道の高尾鋼索線(高尾山ケーブル)など、近隣の私鉄や系列会社が運営するケースがありますが、この鞍馬山鋼索鉄道は、ほかの事業者が入ることなく、鞍馬寺自身で直接経営にあたっています。
「宗教法人が経営する鉄道」は、これもまた日本唯一です。ほかにも参拝客の輸送を必要とする寺院は日本各地にありますが、いまの時代はわざわざ鉄道の免許を取得せずとも、スロープカーや斜行エレベーター(いずれも斜面を上り下りするエレベーターの一種)で事足りる場合が多いでしょう。
なおこの鉄道、法律上の扱いは「運賃無料」(これも日本唯一)ですが、寺へ大人200円を「寄進」し、返礼として乗車の権利を得る、というシステムとなっています。この運賃の扱いも含め、鞍馬山鋼索鉄道は「事業者が宗教法人」「路線距離が日本最短」「カウンターウェイトを使うケーブルカ-」など、日本でここだけの特徴を複数もった鉄道なのです。
ただし、ケーブルカーの助けを借りてつづら折りの坂道をスルーしても、多宝塔駅から本殿までのあいだに百数十段もの石段が待ち構えています。決して楽には参拝できませんので、しっかりと準備のうえでどうぞ。
【了】
※記事制作協力:風来堂、OleOleSaggy
「行ってみたい」と思われた皆さん、現在ケーブルカーとアクセスする鉄道はケーブルカーと叡電の市原~鞍馬間が台風21号による甚大な被害で運休中です(ケーブルカーは9月中から10月初旬にかけて復旧する予定、なお鞍馬駅からの九十九折参道や貴船神社方面に抜ける奥の院参道は通行可能の目処が立ってないそうで……)。市原~鞍馬間の代替バスもそんなに便数がありません(日中。1時間に2本程度)。そこのところ、お気をつけて行きましょう。
ケーブルカーで往復してから、徒歩で登りました。これなら両方楽しめます。
距離も日本最短
現在は、廃線になっているがもっと短いのがあるよ。
『民鉄要覧』1979年 に載っています。
了様ありがとうございます。やはり修行目的でありますね。
運が良いと野生の鹿が側にくる。
以前、ホテルでフロントをしていた時、歩き遍路御一行がバスに乗ってやって来た。
そういう事ね、
カウンターウェイトを持つケーブルカーだと、三方五湖の山頂公園にあるケーブルカーでも見た記憶が。