消えゆく東京メトロの「ポォー」 メロディー拡大で減少続く発車ブザーはいま

列車の発車を音で案内する「発車ベル」は、音楽を使った「発車メロディー」への切り替えが進んでいます。これに伴い、東京メトロの駅で使われてきた独特なブザー音も使用駅が減りました。ちょっと懐かしさを覚えるブザー音はいつごろ消えるのでしょうか。

路線や駅ごとに異なるメロディーへ

 鉄道の駅では古くから、「ジリジリジリ」といったベル音で列車の発車を案内する「発車ベル」が使われてきました。

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新型車両の導入でイメージを変えつつある東京メトロ日比谷線だが、発車案内音は一部の駅を除いて独特なブザー音のままだ(2016年12月、草町義和撮影)。

 しかし、東京エリアで地下鉄を運営する東京メトロは、発車ベルに「ポォー」という独特な音を使用。ベルというよりはブザー音で、2004(平成16)年に民営化される前の営団地下鉄時代から使われているものです。このため「営団ブザー」と呼ばれることもあります。

 一方、鉄道の駅では音楽を使ったメロディー音に切り替えるところが増えており、東京メトロでも発車メロディーの導入駅が増えています。まず1991(平成3)年、部分開業した南北線の各駅に導入。2008(平成20)年に開業した副都心線も開業と同時に発車メロディーを導入しています。

 それ以外の路線では引き続きブザーを使っていましたが、2010年代に入ると発車メロディーへの切り替えが本格化しました。線内各駅のメロディーを進行方向につなぐとひとつの曲になったり(東西線)、駅がある地域と関係が深い歌謡曲を採用(銀座線・神田駅の「お祭りマンボ」など)したりして、路線や駅ごとに特色を持たせています。

 一方、発車メロディーの導入駅が増えるに伴い、長らく使われてきた「営団ブザー」の使用駅が減少しています。地下駅のホームで「ポォー」を聞く機会も減り、いまでは懐かしさすら覚える音になりました。

「営団ブザー」は今後どうなるのでしょうか。東京メトロの広報部に話を聞きました。

あえてメロディーを採用しない駅も

――東京メトロではなぜ、発車メロディーの導入を進めているのでしょうか。

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銀座線の神田駅。かつて「ポォー」と鳴り響く発車ブザーが使われていたが、美空ひばりが歌った「お祭りマンボ」のメロディーに切り替えられた(2018年4月、草町義和撮影)。

 当社の路線や駅に、愛着を親しみを持っていただけるよう、ブザーからメロディーへの切り替えを進めています。

――発車ブザーも一部の駅で使われていますが、将来的には全て発車メロディーに切り替えられるのでしょうか。

 2019年度中には、ほぼ全ての駅に発車メロディーを導入する計画です。

――「ほぼ全て」ということは、発車メロディーを導入しない駅もあるのでしょうか。

 乗り入れ先の鉄道会社と共同で使用している駅は、切り替えに際して調整が必要なこともあり、導入計画の無い駅があります。また(地上にホームがあり、音が外に漏れる)丸ノ内線の茗荷谷駅は周辺にお住まいの方々に配慮し、メロディーの導入を計画しておりません。

※ ※ ※

 2018年9月20日時点で「営団ブザー」を使っている駅(ほかの鉄道会社との共同使用駅を除く)は、日比谷線の秋葉原駅と銀座駅を除く各駅、丸ノ内線の茗荷谷駅と中野坂上駅(2番線のみ)、方南町支線の各駅、千代田線の乃木坂駅を除く各駅です。なお、共同使用駅は東西線の中野駅と有楽町線、副都心線の和光市駅、千代田線の代々木上原駅、半蔵門線の渋谷駅では、いまのところ東京メトロの発車メロディーを導入する計画はありません。

 いずれにしても、2019年度中には発車ブザーを流す駅がほとんど無くなる見込みです。逆にいえば「ポォー」が流れる駅はひじょうに珍しくなるため、新しい「音の観光スポット」として注目されるようになるかもしれません。

【了】

※一部修正しました(10月10日10時20分)

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