戦車の砲はなぜひとつ? 多砲塔戦車が廃れ単砲塔単砲身に落ち着くまでの紆余曲折とは(写真14枚)

かつてはたくさんの砲塔や砲身を備えた戦車もありましたが、その誕生からおよそ100年、世界中どこを見ても砲塔ひとつに砲身がひとつという同じカタチをしています。そこに落ち着いたのには、実にわかりやすい理由がありました。

多砲塔戦車大国・ソ連の場合

 一方、ソビエト連邦(ソ連)は多砲塔戦車をあきらめず、T-28という多砲塔戦車を503両造って実戦配備します。

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第一次ソ・フィン戦争でソ連が遺棄した車体を再整備の上、自軍の戦車として配備したフィンランド軍のT-28(画像:月刊PANZER編集部)。

 この数は多砲塔戦車の世界最高生産数です。しかもソ連はその後、このT-28よりも大型のT-35を63両作りました。

 T-35は76.2mm砲塔1個、45mm対戦車砲塔2個、機銃砲塔2個を載せ、全長9.7m、全高3.4m、重量45tという「インディペンデント」を上回る堂々の迫力がありました。ソ連軍の威容を示す軍事パレードにはもってこいで、ソ連各地のイベントに駆り出されるような「スター戦車」でした。

 しかし、さすがにここまで大きいと、実運用では不具合が多く、なおかつ機動力は低く、故障は多く、さらに重量の割には装甲が薄いと多くの欠点を抱えていました。

 そのため1940年にもなると、ソ連国内ですら多砲塔戦車の有用性に疑問符がつくようになり、T-35の後継として企画されたSMKやT-100といった多砲塔戦車には、最高指導者スターリンも設計者たちに「君達は戦車のなかにデパートでも作るつもりか」と嫌味をいうほどでした。

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現在、ロシアのクビンカ博物館に展示・保存されているT-35重戦車(月刊PANZER編集部撮影)。
T-100重戦車。設計時は砲塔を3つ装備する予定だった。T-35重戦車の後継として開発されたが、試作2輌で終わった(画像:月刊PANZER編集部)。
独が少数製作したNbFz(ノイバウ-ファールツォイク)。ノルウェー侵攻作戦に参加以降は、もっぱら独国内で戦意高揚の広報用として使われた(画像:月刊PANZER編集部)。

 しかも第二次世界大戦が始まり、ソ連軍がドイツ軍と直接砲火を交えるようになると、イギリス陸軍「陸上艦隊」の評価の通り「実戦向き」ではないことが露呈しました。独ソ戦ではT-35が現役で使われたものの、ノロノロとしか動けない大きな車体に薄い装甲、たくさんある砲塔も好き勝手な方向を向いて連携が取れず、すぐに故障して動けなくなる車輌が続出し、砲塔1個で機敏に動くドイツ軍戦車に全く太刀打ちできませんでした。こうしてT-35は実戦では活躍できず、大戦初期で早々に姿を消します。結局、多砲塔戦車は軍事パレード用の見掛け倒しで終わりました。

 多砲塔戦車の発想は斬新でしたが、考えることと造ること、使うことは別問題でした。現代の戦車は「デジタル戦車」と呼ばれるほどコンピューター化、IT化が進んで強そうに見えます。しかし、これまた激戦をくぐったことはまだ一度もないため、「見掛け倒し」でない保証はないのです。

【了】

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Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

6件のコメント

  1. 昨今の市街戦等の歩兵対策で砲塔上に装備されるRWSなんて多砲塔戦車の再来って言えなくもない?

    その前にアメリカのM60戦車の車長キューポラ内装の.50calもそんな感じだけど。

  2. ロマンがあるだけに来て欲しい多砲搭戦車が見直される日

  3. 多宝塔の精神は日本で生きている。

  4. この手のライターさんは、

    なぜパットンやリーやラム等の銃塔を無視するのか。

    多砲塔戦車の中でも特異なT-35を代表扱いするのか。

    T-35が採用時点の戦車の中では重装甲だったことを無視するのか。

    T-28が当時BTを除けば最高クラスの機動力だったことを無視するのか。

    英の多砲塔戦車はA1E1以外機動戦車の系列だということを無視するのか。

  5. 公式に多砲塔戦車というカテゴリが存在するわけではなく、後世の人間が複数の砲塔を持つ戦車の一部を恣意的にそう呼んでいるだけです。

  6. ついでにインデペンデントが複数の銃塔を持つのは、WW1で戦車の機動力に追従できなかった随伴歩兵の代わりに戦車を守る、いわば歩兵からインデペンデントする為という明確なもの。記事中のようなぼんやりした理由ではありません。

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