追加調達か、早期警戒機E-2D「アドバンスド・ホークアイ」 空自の新しい「空飛ぶ目」

自衛隊への導入はあの有名な事件がきっかけ

 航空自衛隊は1970年代前半から、早期警戒管制機の持つ能力に加えて、機内から多数の目標に対する迎撃管制能力も備えた早期警戒管制機E-3「セントリー」の導入を検討していましたが、予算不足などで政府から導入を認められていませんでした。しかし1976(昭和51)年9月6日に発生した、ソ連防空軍に所属するMiG-25戦闘機の函館空港への強行着陸事件で、航空自衛隊のF-4EJ「ファントムII」戦闘機や地上レーダーが、超低空を飛行するMiG-25を見失ってしまったことから、急遽早期警戒機である「E-2C」の導入が決定。1983(昭和58)年から1994(平成6)年までに13機が導入されています。

 来年度概算要求に2機の調達費が計上された早期警戒機E-2Dは、このE-2Cの発展改良型です。

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航空自衛隊が13機を導入したE-2C「ホークアイ」早期警戒機(画像:航空自衛隊)。
アメリカ海軍のE-2Cのレーダー管制室。わずか3名の電子システム士官でレーダーの操作や通信、作戦の立案などの任務を行なっている(画像:アメリカ海軍)。
シンガポール空軍の「G550-AEW」早期警戒機。ベースは大型ビジネスジェット機「G550」。6名の電子システム士官の搭乗が可能で、トイレやギャレーも備える(竹内 修撮影)。

 E-2Dの外見はE-2Cとほとんど変わりなく見えますが、搭載するレーダーがE-2Cの「AN/APS-96」から、ロッキード・マーチンが開発した、より能力の高い「APY-9」AESAレーダーに変更されています。

 APY-9レーダーはE-2C同様にレーダードームを回転させて、全周に渡って空中と洋上を監視するモードに加えて、一定の範囲を重点的に監視するモード、レーダードームを目標の方向に向けて回転を止めて捜索を行なうモードも備えています。E-2Dのメーカーであるノースロップ・グラマンによれば、回転を止めて捜索を行なうモードを使用するE-2Dは、E-2Cの5倍以上の距離の探知ができるとのことです。

 空母に搭載するため機体の大きさに制限のあるE-2Cは、E-767などの早期警戒管制機や、近年増加しているビジネスジェット機をベースに開発された早期警戒機に比べて機内のスペースが小さく、レーダーの操作や味方との通信などを担当する電子システム士官は3名しか搭乗していません。わずか3名ですべての任務をこなさなければならないため、E-2Cの電子システム士官には大きな負担がかかっています。E-2Dのコクピットの液晶ディスプレイには電子システム士官の座席の液晶ディスプレイと同じ画像を表示する能力を備えており、必要であれば副操縦士が電子システム士官の任務の一部を担当することができます。

 E-2Cとアメリカ海軍の運用するE-2Dにはトイレがありませんが、航空自衛隊の導入するE-2Dにはユニット式のトイレと、食べ物を温めたり暖かい飲み物を作ったりできるギャレーが追加装備されています。航空自衛隊のE-2Cは、空母から運用されるアメリカ海軍のE-2CとE-2Dに比べて作戦時間が長く、乗員には大きな負担がかかってきましたが、E-2Dはその負担を大幅に軽減することができます。

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