駅そば界の新風? 夜は缶詰酒場に変身する京急の「二毛作」店、その戦略とは

鉄道駅構内の定番飲食店「駅そば」は、時代のニーズに合わせて進化しています。京急線には、朝・昼は駅そば店、夕方以降は立ち飲み酒場に早変わりするというふたつの顔をもつ店も。異なる業態を効率的に営業する工夫も満載です。

缶詰の活用で「一石三鳥」の効果 二毛作の駅そば店が出現する背景

「えき缶酒場」は、店名のとおり缶詰などを提供する立ち飲み店です。客は入店して右奥にある棚から、好きな缶詰を選んで手に取り、レジで飲み物などと一緒に精算。あとは、席で待っていれば配膳してくれます。

 缶詰は希望すれば湯煎で温めてくれます。焼き鳥や味付きイワシなど廉価でポピュラーなものから、「ムール貝の煮込み」「鯨大和煮」などの凝ったものまで幅広いラインアップ。全般的に味付けが濃い缶詰は、お酒も進むうえ、少量の肴で飲めるので結果的に安くあがるかもしれません。

「えき缶酒場」では缶詰だけでなく、注文料理も提供しています。「えきめんや」のそばつゆに昆布を足した出汁で煮込んだおでんや、前出のかき揚げなど、そば店らしいメニューも。天ぷら類は、希望すればそばつゆをかけて「天ぬき」にしてくれるうえ、夜の部でもそばを注文できますので“〆のそば”も楽しめます。また、缶詰を使ったアレンジ料理も提供しており、調理の必要がない缶詰を提供することでオペレーション効率を高め、さらにアレンジ料理を加えることでメニューの幅を広げているのです。そのうえ、ユニークさが話題を呼ぶのですから、一石二鳥どころか“一石三鳥”の工夫といえるでしょう。

 全国約3000の駅そば店で1万杯以上を実食し、『駅そば 東西食べくらべ100』(交通新聞社)などの著書をもつ鈴木弘毅さんによると、二毛作の駅そば店は都市部を中心に増えているといいます。「えき缶酒場」の缶詰を筆頭に、地域の地酒を扱う店、スパークリングワインで女性の支持を集める店などが各地でオープンし、個性も表れ始めているとのこと。なぜこのような傾向があるのでしょうか。

 駅そば店は、夕方以降に客数が落ち込む場合が多いもの。閑散時間帯に酒類を提供すれば、空席を効率よく埋めることができ、収益アップにつながるでしょう。しかし、ホームを中心とした改札内では、スペースの狭さや鉄道会社との取り決めなどにより、酒類を提供できないケースも少なくありません。

 一方で近年、駅そば店の出店地がホームからコンコースへ、改札内から改札外へ移る傾向が見られます。その要因は、鉄道輸送の安全確保や衛生面への配慮、集客効率向上などさまざま。女性や高齢者にも利用してもらおうと椅子を設置したり、店内でゆで上げる生麺や揚げたての天ぷらなどを提供するための厨房機器を導入したりで、より広いスペースが必要になっているということもあるでしょう。

 この傾向が、二毛作店の出現につながっていると鈴木さんは分析します。黄金町駅の「えきめんや」も、酒類の提供が可能な立地で、なおかつ充分なフロア面積があったため、「酒を飲める駅そば店」を実現できたというわけです。

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「えき缶酒場」では常時40種類以上の缶詰を揃える(画像:風来堂)。

 仕事帰りのサラリーマンなどでにぎわう「えき缶酒場」、本格的に混雑するのは18時以降ですが、店が切り替わる16時になるのを待って入店する人も少なくありません。

【了】

※記事制作協力:風来堂、鈴木弘毅

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