変わる船のブリッジ 少し宇宙船ぽい日本郵船の「情報統合型船橋」新造船が処女航海へ

いわゆるひとつの「働き方改革」

 これまでのブリッジとは使い勝手も大きく変わったとのことで、「モノセロス・リーダー」のパヴァン・ピーター・デリマ船長は「座ったまますべて操縦でき、操作性はとても素晴らしい」といいます。着座し、かつ各種計器がすぐ近くにあるということは、たとえば注視すべき他船の動向などから視線を外す機会が減り、誤認を減らし、ひいてはヒューマンエラーの防止につながります。

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コンソールを前にデモンストレーションするデリマ船長(2018年10月24日、乗りものニュース編集部撮影)。

「船同士衝突しないためには、ほかの船が自分の船のコリジョン(衝突)コースに入っているか把握する必要があります。その方法は、自船から見たほかの船の方位が変わらなければ衝突する危険があると判断します。しかし船は速度が遅く、船体が大きいため、(クルマなどに比べ)その変化がとてもゆっくりとして見えます。海上の、ほかに比較対象がないところではより顕著になります。そうしたことから、衝突する危険がある船が近づいてきても、目を離してばかりいるとその方位の変化を認識できず、結果、気づいたときには近すぎて避けられないということがあり得ます」(日本郵船 広報担当)

 ほかの船がコリジョンコースに乗っていた場合、「私的には、5マイル(約9km)くらいの距離からでも危険を感じます」(同広報担当。航海士として勤務経験あり)とのことです。

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手前が船長席。手元のスイッチでモニタの表示を切り替えられる(2018年10月24日、乗りものニュース編集部撮影)。
手前が「情報統合型船橋」の中核のひとつ、運航支援装置「J-Marine NeCST」(2018年10月24日、乗りものニュース編集部撮影)。
「モノセロス・リーダー」のメインシャフト。船外のスクリューへつながる(2018年10月24日、乗りものニュース編集部撮影)。

 またこの情報統合型船橋は、現在研究開発が進む自動運航船についても視野に入れたものといいます。

「IoT(Internet of Things、あらゆるモノがインターネットでつながること)技術の進展を背景に『J-Marine NeCST』が実用化するなどし、航海に関するさまざまな情報を集約して、それを地上やほかの船と共有することが可能となってきています。これにより、さらなる安全な航海の実現を図っています。この『情報技術の深化によってより高い安全性を実現する』というのは、日本郵船が考える『船の自動運航』に向けたひとつのステップでもあります」(日本郵船 広報担当)

「モノセロス・リーダー」は全長199.98m、全幅35.8m、総トン数7万497トン、船速約20ノットで、12層のデッキに最大約7100台の普通乗用車を積載することが可能です。同船はこのあと川崎港を出港し、国内各地で輸出用の自動車などを積み込み、北米へ向け初めての外洋航海に出るとのことです。

【了】

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コメント

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3件のコメント

  1. 某2199では、現在の考証に従って、大マゼラン銀河と言ってましたね。

  2. この手の着座式コクピット型ブリッジって、1990年代の前半にはもうあったはず。
    というか実際に見たことがある。
    これまで主流になれなかったのは、何かしらの理由があったんだろうな。

    あと、着座式だと、特に夜航海中に居眠りする危険性が大きい。昼間でも危ない。
    操舵手が常にブリッジにいれば大丈夫だろうけど。

  3. ズムウォルト程は興奮しない