「補給艦」どんな船? 見た目は軍艦、中身は民間 カナダ海軍「アストリクス」に乗艦(写真15枚)

補給活動から災害支援まで 幅広く活躍できる「アストリクス」

 そのような役割を持つ補給艦の「アストリクス」は、2018年から運用が始まったばかりの新型補給艦です。全長182mの艦内には、他艦艇に補給するための燃料を1万立方メートルぶん積み込めます。これは、長さ100m、幅10m、深さ10mの水槽をいっぱいにできる量です。

Large 181124 asterix 05

拡大画像

燃料補給装置。4か所に設置されているこの装置はそれぞれ「ステーション1」「ステーション4」などと呼ばれている(2018年11月21日、乗りものニュース編集部撮影)。

 一般的に、補給艦はこの燃料を、甲板に備え付けられたホース状の装置によって、並走する艦艇に対し補給します。「アストリクス」の場合、この装置を片側ふたつずつ、計4つ備えていて、相手の船と50ヤード(約46m)の距離を保ちながら、最大で2隻同時に燃料を補給できます。また、艦前方部には食料や弾薬などの物資を補給するための装置も備え付けられています。

 艦尾には、ヘリコプターが着艦するためのヘリ甲板と、ふたつのヘリ格納庫が備えられています。特にヘリ甲板では、着陸装置がタイヤではなくソリ式の民間ヘリコプターが着艦することも想定されているため、ソリをつかむためのネットが備えられています。

Large 181124 asterix 06 Large 181124 asterix 07 Large 181124 asterix 08

拡大画像

拡大画像

拡大画像

ヘリ甲板に展開されたネット。これでソリ式のヘリに対応する(2018年11月21日、乗りものニュース編集部撮影)。
手術室には手術台が置かれているが、幸いまだ使用されたことはない(2018年11月21日、乗りものニュース編集部撮影)。
乗員室は完全な個室で、テレビやトイレ・シャワーまで完備されている(2018年11月21日、乗りものニュース編集部撮影)。

 一方で、艦内の様子は「軍艦」というものではなく、さながら会社のオフィスか、あるいは客船のような雰囲気を感じさせる非常に快適な空間です。乗員室はテレビ付きの個室で、艦内の移動用にエレベーターまで完備されています。さらに、急病人が発生した場合に備えて、艦内には陸上にある病院と同様の設備を備えた病室や手術室、レントゲン室から歯科治療室まで備えられています。

 こうした設備は、2011(平成23)年に発生した東日本大震災のような大規模災害などに際して行われる救難活動といった、いわゆる「人道支援/災害救援(HA/DR)」においても活躍することが期待されています。そのため、「アストリクス」は負傷者60名を受け入れ可能な病床のほか、通常乗船可能な150名分の居住スペースに加え、緊急時にはさらに350名を受け入れられます。つまり、「アストリクス」は単にほかの艦艇に対する補給活動を行うだけではなく、災害時における救難拠点としての活躍も期待される存在なのです。

この記事の画像をもっと見る(15枚)

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。