「補給艦」どんな船? 見た目は軍艦、中身は民間 カナダ海軍「アストリクス」に乗艦(写真15枚)

艦長は民間人のナゼ?

 これまでみてきた「アストリクス」ですが、実はこの船にはカナダ海軍の軍人だけではなく、民間人もスタッフとして乗船しています。具体的には、軍人が45名、民間人が36名です。前述の医療設備で働く医師やスタッフも民間人で、さらに「アストリクス」の航行の関わる業務は、ほぼすべて民間人の乗員によって行われているのです。ちなみに、「アストリクス」の艦長も、軍人ではなく民間人が務めています。

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「アストリクス」の広々としたブリッジ。通常はこのブリッジから2名のみで操艦している(2018年11月21日、乗りものニュース編集部撮影)。

 なぜこのような軍民両用形態の運用が行われているのかというと、実はこの「アストリクス」、もともとは2010(平成22)年にドイツで完成した民間のコンテナ船なのです。それを2年間かけて補給艦に改修し、現在はカナダ軍がこの船を所有する企業と契約を結んで、操艦は民間が、補給活動にともなう作業などは軍が行う形で作業分担しているのです。

 なぜそのような複雑な方法で、カナダ海軍はこの「アストリクス」を補給艦として運用することとなったのでしょうか。

 もともとカナダ海軍は、「プロテクチュール」と「プリザーヴァー」という2隻の補給艦を運用していました。しかし、この2隻はいずれも運用開始が1960年代半ばで、すでに40年以上(当時)が経過しており、新造の後継艦を2020年代から運用する計画が立ち上がりました。しかし、先述した「プロテクチュール」が2014年に発生した火災で、さらにその後「プリザーヴァー」が老朽化で、それぞれ予定より早く退役することとなったため、後継艦が建造されるまでのつなぎとなる補給艦が必要になりました。そこで白羽の矢が立ったのが、この「アストリクス」でした。いわば、「アストリクス」は暫定的な措置として、補給艦として運用されているわけです。

 このように複雑な事情を抱える「アストリクス」ですが、たとえ暫定的な措置とはいえ、その高い能力はまさにカナダ海軍を支える縁の下の力持ちとしてそん色ないものです。また、将来起こり得る大規模自然災害においても、「アストリクス」がもつ高い能力は被災地にとってまさにかけがえのないものとなるでしょう。

【了】

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