「移動給油所」はGS過疎を救うか 「どこでもスタンド」でタンクローリーから直接給油

日本初となる「移動給油所」の実証実験が進行中です。タンクローリーから計量機を介してクルマへ給油するという今回の実験、地方におけるガソリンスタンドの「過疎化」対策として実施されていますが、実運用には消防法の壁も存在します。

ガソリンの「移動販売」本来はできないワケ

 ガソリン需要の減少や、後継者不足などを背景に、ガソリンスタンドが減少し続けています。特に過疎化が進む地方では深刻で、2018年3月末現在においてスタンドが3か所以下しかない自治体は、全国で312にも上っています。

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タンクローリーから「どこでもスタンド」と呼ばれる計量機を介して給油するイメージ(画像:経済産業省「第2回次世代燃料供給インフラ研究会」資料)。

 そのようななか、静岡県浜松市が経済産業省の補助金を活用し、2018年11月から2019年1月まで、市内の山間部で日本初となる「移動給油所」の実証実験に取り組んでいます。通常、ガソリンスタンドでは地下タンクに貯蔵した燃料を供給しますが、今回の実験は可搬式の計量機「どこでもスタンド」を介し、タンクローリーから一般のクルマへ直接給油するというものです。浜松市の市民協働・地域政策課に話を聞きました。

――今回の実験にはどのような背景があるのでしょうか?

 天竜区の春野地域でガソリンスタンドがなくなるとわかり、地元から対策の要望書をいただいたことがきっかけです。そこで、経済産業省の「SS(サービスステーション)過疎地対策検討支援事業補助金」に応募し、今回の実験を行うことになりました。2018年11月にまず3日間、同じ天竜区の龍山地域にあるガソリンスタンド跡地で実施したほか、今後1月までのあいだに龍山地域・春野地域で計4回行います。

 両地域は公共交通がなく、生活にはクルマが不可欠です。灯油は民間業者が移動販売を行っていますが、ガソリンは通常、そのような販売ができません。また、実験で使っている「どこでもスタンド」と呼ばれる計量機は、同時に複数油種を取り扱えない仕様であるため、今回はレギュラーガソリンの販売に限定しています。

――タンクローリーからの給油は、これまで行われていなかったのでしょうか?

 消防法により、タンクローリーからクルマへの給油は原則として認められていませんが、災害発生時に10日以内のあいだ、臨時的に認められる制度があります。今回はそれを特別に適用したものです。

――ドライバーが自分で給油できるのでしょうか?

 いえ、給油は専門のスタッフが行います。今回の実験は特例ということもあり、給油する者、それを監視する者、仮設給油所の交通誘導を行う者も含めてスタッフ6人体制で行い、一般ドライバーも給油の際にいったんクルマを降り、そこから離れてもらうなど、安全を確保したうえで実施しています。

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