バス「V型つり革」の効果とは? ベルトが2本 しかし新規採用が少ないワケ
主婦のアイデアで誕生!
V型つり革は、バスの内装品などを手掛ける稲垣工業(東京都大田区)が、1980(昭和55)年に初めて商品化しました。同社では「ダブルベルト」と呼んでいるとのこと。
「そもそもは、札幌にお住まいだった一般主婦の方のアイデアです。その方が実採用に向けてバス事業者などにあたるなか、当時北海道にあった当社の営業所へ相談に来られ、商品化に至りました。おそらく、当社のダブルベルトを初めて採用されたのは仙台市交通局さんでしょう」(稲垣工業)
北海道新聞の1980(昭和55)年1月24日夕刊に、V型つり革が誕生した経緯が主婦の写真付きで紹介されています。それによると、主婦が市電に乗っていたとき、乗客が2本のつり革をまとめて握っているのを見てひらめいたアイデアだそうです。記事では、「車が悪路やカーブに差し掛かるたびに、つり手につかまっていた乗客は、体ごと振り回されることがあったが、こうしたことが少なくなり、車内事故の防止にもつながる」としています。
稲垣工業によると現在、V型つり革はコミュニティバスの小型車両でも使われるケースがあるものの、新規採用はそう多くはないとのこと。
「いま路線バスで主流のノンステップバス(乗降口付近の段差をなくしたバス)は、車内後方の床が高くなっています(編注:床下にエンジンなどがあるため)。この高くなった部分の上につり革をつけると、立っている人の頭に当たりやすいため、ノンステップバスでは基本的に、車内中ほどから前寄りにかけての低い部分にのみ、つり革がつけられます。つまり、昔と比べて車内のつり革が少なくなっているのですが、そこでダブルベルトを採用すると、さらに減ってしまうのです」(稲垣工業)
前出の仙台市交通局は、今後もV型つり革を使っていくそうですが、東武バスグループでは2016年4月以降に導入した車両から、I型に変更しているといいます。
ちなみに、つり革メーカーである三上化工材(大阪市西淀川区)によると、V型ではないつり革でその揺れを少なくする方法としては、ベルトを短くすることなどが考えられるとのこと。おにぎり形の手掛けと、長方形の広告を貼る部分が一体となった「広告付手掛」などは、ベルト1本でも短くできるそうです。
【了】
最近は混んでるバスに乗らなくなってしまいましたが、乗っていた頃は吊り革よりも手すり棒の方が、急発進や急ブレーキの時などの安全性が高くて、そちらを使うことが多かっったです。どうしてもつり革は自分の身長にしっくりくる人が少ないのでは?と思いますし、都心部では停留所間隔が短すぎて好かれなかったのかなと思います。
神戸の市バスにあるのは知っていたが、既に仙台にも採用されていたとは。。。
またチェックしてみたい。
秋田市交通局(2006年閉局)では1985年頃からダブルベルトを採用しており、利用客として気になる存在だったのですが、この記事でやっと開発経緯を知ることができました。鉄道と比べて前後方向の加減速が激しいバスでは、ダブルベルトは有意義だったと思います。
なお、青森県の弘南バスが、おそらく2000年頃以降に新たにダブルベルトを採用しています。