東北の高速バス事情 列車からバスへ継承された「夜行文化」、新幹線延伸でどう変わった
いまや「朝9時台には東京着」 新幹線の新青森開業が与えた影響
近年は飛行機などとの競合により、全国的に長距離夜行路線が衰退傾向にあります。そのなかでも東北では長距離路線の需要が旺盛ですが、2010(平成22)年に東北新幹線が新青森まで延伸した影響は大きく、変化も起こっています。
青森県や秋田県の人が在来線と新幹線を乗り継いで東京に向かっていたころは、地元を早朝に出ても東京着は昼前となり、午前中に東京で予定を入れるには前泊が必要でしたが、現在では新幹線で朝9時台に都心へ到着することができます。航空会社も、自治体の補助を得るなどして青森空港や秋田空港を早朝に離陸する便を設け、朝8~9時台に羽田空港に到着できるようになりました。同様に、東京発下りの新幹線、航空便も遅くまで運行されています。その結果、以前のように「夜行が便利だから」高速バスを選ぶ出張客らは減り、市場は縮小傾向にあるのです。
それでも、前述のとおり弘前、大館、宮古、気仙沼といった、鉄道だと乗り換えが必要な都市から首都圏への夜行路線は比較的好調です。たとえば弘前~東京間は、最初に紹介した弘南バスが「ノクターン号」(3列シート。京浜急行バスとの共同運行で片道あたり毎日2~3台)、「パンダ号」(4列シート。単独運行で毎日3便5台)、さらにこれほどの長距離にも関わらず昼行便「スカイ号」を1台、運行しています。これ以外に、ジャムジャムエクスプレス(東京都)など、いわゆる「高速ツアーバス」からの移行事業者による便もあります。
「ノクターン号」は一時期、毎日片道5台での運行でした。現在、平時はそれより数が減っていますが、年末年始など帰省ラッシュのピーク日には貸切バス車両を大量に続行便として投入し、10台を超える運行もあります。また、3月に弘前バスターミナルから「ノクターン号」に乗車すると、進学や就職のために東京へ旅立つ若者を、同級生たちが見送っている姿を目にします。出張客らの需要が減るなか、高速バス利用者は運賃を重視する若年層が中心となりつつあるのです。
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