「潜水空母」伊四百型はなぜ生まれ、何を残した? 旧海軍、乾坤一擲の「秘密兵器」

旧日本海軍の伊四百型潜水艦は、実際の戦闘を経験しないまま終戦を迎えました。しかし従来の潜水艦とはスペック、役割、ともに一線を画しており、のちの世に与えた影響は計り知れないといいます。

戦後の潜水艦に与えた影響

 これら「潜水空母」にアメリカ海軍は強い関心を示し、1946(昭和21)年1月、伊四百と伊四百一の2隻および、水上攻撃機2機を搭載できる潜水艦「伊十四」をハワイに持ち帰り、徹底的に調査します。しかしソ連(当時)もこの「潜水空母」に関心を持っていることが明らかになると、アメリカ海軍は演習と称して、1946(昭和21)年6月までに、魚雷の標的にして3隻とも沈めてしまいます。そのころすでにアメリカとソ連による、戦後覇権をめぐる冷戦は始まっており、ソ連に情報を渡したくなかったのです。

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降伏後、横須賀にて米海軍管理下で物品搬出される、手前から伊四百、伊四百一、伊十四。伊四百の前甲板に水上攻撃機射出用のレールが見える(画像:アメリカ海軍)。

 伊四百型の影響なのかは明らかではありませんが、それまで飛行機を潜水艦に載せることに関心の無かったアメリカ海軍は、潜水艦に地上を攻撃できる巡航ミサイルを載せる研究を始めます。1953(昭和28)年7月には、潜水艦「タニー」から核巡航ミサイル「レギュラス」を発射するテストに成功しました。これは伊四百の「晴嵐」が核巡航ミサイルに変わっただけ、ともいえるでしょう。ちなみにこの「レギュラス」は、ドイツが開発したV-1飛行爆弾の発展改良型とされています。

 この後、潜水艦に戦略ミサイルを搭載する技術が急速に進歩し、潜水艦は戦略核戦力を担う柱になっていくのですが、アメリカ軍内部の政治的に見ると、それまで空軍の占有物であった核爆弾を海軍も取り扱えるようになり、海軍の発言力が増すきっかけにもなっています。

 伊四百は単に技術面だけでなく、政治的、軍事的にも後世に大きな影響を残した、別の意味での「超弩級」の潜水艦だったといえるかも知れません。

【了】

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